極低放射能環境を生かした、液体キセノンを用いたニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊(0ν2β)発見に向けた研究開発を行なった。エネルギー付加による 不感領域を無くすため、プラスチックシンチレータ容器内に液体キセノンを導入し、0ν2β探索の探索感度を大幅に向上させる。また将来究極のバックグラウン ドとなる8B太陽ニュートリノ低減のため、液体キセノン中で発生するチェレンコフ光と液体キセノンのシンチレーション光を分離して検出することにより、どの 程度方向の情報を抽出できるか評価を行う。 本年度は、開発したTPB波長変換剤を2%溶かし込んだ直径20cmのトライタン樹脂製容器に1kgの液体キセノンの導入に成功した。キセノンガスを安定して液化するための温度、圧力、ヒーターに印加する電圧等、各種パラメータの調整に成功した。波長変換した液体キセノンのシンチレーション光をチェレンコフ光読み出し用の合計30chの2インチマルチアノードPMT7本とシングルアノードPMT2本で読み出すことにも成功し、データ収集システムの試験も行なった。収集光量を増やすために高光量子効率の8インチPMTをクライオスタット内に導入し、エネルギー分解能の評価も行える装置に改良した。また波長変換した液体キセノンのシンチレーション光と新型トライタン樹脂製のプラスチックシンチレータの波形弁別にも成功し、背景事象低減の手法を確立した。 また本年度は研究成果を国際会議、日本物理学会で報告した。
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