研究課題
我々が理化学研究所において進めている世界初の電子・不安定核散乱実験研究で使用する散乱電子スペクトロメータの強化を行っている。今年度前半は、昨年度までに製作した新型の荷電粒子飛跡検出器の動作テスト、宇宙線を用いた性能評価を東北大で行い、後半には理化学研究所に運び込んでSCRIT電子散乱施設の散乱電子スペクトロメータに設置した。SCRIT装置内部に仕込んだ校正用の炭素標的に電子ビームを照射して行ったコミッショニング実験にも成功し、炭素標的からの弾性散乱ピークを検出した。現在まだデータ解析の途中ではあるが、検出器単体としての分解能や検出効率はほぼ想定通りであることが確認されている。新型飛跡検出器の安定した運用のためには、読み出し回路系のノイズ調査などのスタディ項目が若干残されているが、2019年度に行う不安定核実験には万全の体制で望める見込みである。また磁場測定装置の開発も行っており、ホールプローブの3軸化を実施した。さらに我々が所有する大型電磁石内部の均一磁場を用いたプローブ間の相対角度測定を行った。上記不安定核実験に前後して3軸磁場マップ測定を実施し、散乱電子スペクトロメータの高精度化を達成する見込みである。9月にハワイで行われた日米合同物理学会において、SCRIT実験に関して現状と将来計画の報告を行った。また2018年度3月の日本物理学会において、新型飛跡検出器の性能評価位に関する現状報告を行った。磁場測定に関しても同学会において共同研究している修士学生が報告した。
2: おおむね順調に進展している
飛跡検出器の開発と動作テストはほぼ完了しており、順調に進んでいると言える。磁場測定に関しては、3軸測定装置の完成が少し遅れているが、磁場分布測定自体は電子散乱実験とは独立しており、2019年度内での研究遂行には問題ない。
新型飛跡検出器に残された回路系のスタディ項目は2019年度前半には終了する見込みである。磁場測定もそれと前後して行い、夏前後には世界初の不安定核を標的とした電子散乱実験を実現する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Nuclear Physics News
巻: 28 ページ: 18~22
10.1080/10619127.2018.1427951