研究実績の概要 |
暗黒物質サブハローの解析的モデルを構築し、成果を"Modeling evolution of dark matter substructure and annihilation boost", Nagisa Hiroshima, Shin'ichiro Ando, Tomoaki Ishiyama, Physical Review D誌、97巻、123002 (2018)として出版。 そしてそのモデルを用いてガイア衛星のデータ解析結果の解釈を行なった。その成果は"A Gaia DR2 search for dwarf galaxies towards Fermi-LAT sources: implications for annihilating dark matter", Ioana Ciuca, Daisuke Kawata, Shin'ichiro Ando, Francesca Calore, Justin I. Read, Cecilia Mateu, Monthy Notices of the Royal Astronomical Society誌、480巻、2284ページ、(2018)として出版。 本研究計画の解析の骨組みとなるパワースペクトル解析を、IceCube実験によって検出された高エネルギーニュートリノのデータへの適用を行ない、その成果を "Angular power spectrum analysis on current and future high-energy neutrino data", Ariane Dekker, Shin'ichiro Ando, Journal of Cosmology and Astroparticle Physics誌、1902巻、 002 (2019年)として出版した。 暗黒物質サブハローによる対消滅ブーストの計算について、過去の研究を総括したレビュー記事を、エディターの依頼をうけ、Galaxies誌、特別号"Halo substructure boosts to the signatures of dark matter annihilation"へと投稿。現在査読中である。こちらのレビュー論文は"Halo substructure boosts to the signatures of dark matter annihilation", Shin'ichiro Ando, Tomoaki Ishiyama, Nagisa Hiroshima, arXiv:1903.11427 [astro-ph.CO]として公開済みである。 これらの成果を元に国際研究会TeV Particle Astrophysics 2018、COSMO 2018、Dark Ghosts 2018、日本物理学会等で多数講演。また領域シンポジウムにおいても進捗状況の報告を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
角パワースペクトルによってガンマ線源の空間情報、銀河や重力レンズカタログとのクロス相関によって距離情報が得られる。これらをエネルギーのビンに区切って同時に用いることで、エネルギー、位置、距離の情報をすべて活用した解析が可能となる。この課題に取り組み、暗黒物質探査にとって最高感度の達成をめざす。 エネルギースペクトルと角パワースペクトルは、フラックス確率分布関数の平均と分散にそれぞれ対応する物理量である。分布関数が正規分布であると知られている場合は、このふたつの量を研究することですべての情報が得られる。しかしながらほぼ全てのガンマ線源の場合、フラックス確率分布は冪則にしたがうテイルを持つことが、本研究代表者らによって理論的に示されている。Nicolao Fornengo教授(トリノ大学)のグループと共同で確率分布関数の解析に当たる。Fornengo教授らのデータ解析の経験(Zechlin et al. 2016, Astrophys. J. 826, L31)と研究代表者のグループで構築した理論的計算の経験を組み合わせることで、確率分布関数のデータを暗黒物質モデルに照らし合わせて解釈していくことを計画している。 これらのデータによって得られた結果を理論的に解釈するにあたって、暗黒物質サブストラクチャーによる対消滅ブーストを適正に計算しておく必要がある。この対消滅ブーストの計算を、構築済みの解析的モデルに対してさらなる精密化を施していくことで、進めていくことを計画している。さらに銀河ハローの形成史に対する依存性を詳細に研究していく。
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