研究実績の概要 |
前年度までに構築したサブハローの準解析的モデルを、銀河内の衛星銀河に適用することで、密度プロファイルの見積もりの精度を向上させることに成功した。この結果、衛星銀河を取り囲むように存在する暗黒物質サブハローにおける暗黒物質対消滅レートを先行研究のものと比べてファクター7に及ぶ違いがあることを指摘した。衛星矮小銀河は暗黒物質対消滅の制限を与える上で、主要な天体と捉えられており、この制限に関して従来の理解を大きく書き換えた意義は非常に大きい。この結果はPhysical Reivew D 102巻、061302 (2020)として出版した。 この結果を、X線からのステライルニュートリノへの制限へと適用した結果や、さらには銀河ハローから将来X線計画eROSITAでステライルニュートリノの崩壊寿命にどの程度の制限がかせるかも調べており、それぞれPhysical Review D 104巻、023021, 023022 (2021)として出版している。またwinoと呼ばれる有力な暗黒物質に対するCherenkov Telescope ArrayというTeVガンマ線望遠鏡の感度についても調べ、Physical Review D 101巻、023016 (2021)に出版した。 さらには、本計画で確立した、ガンマ線背景放射のクロス相関の手法を、宇宙マイクロ波背景放射におけるSunyaev-Zel'dovich効果に適用し、こちらもPhysical Review D 104巻、103022 (2021)に出版している。 このように本計画ではサブハローの準解析的モデルを構築、それを用いたクロス相関などの統計的手法を駆使することにより、暗黒物質の正体にこれまで以上に深く迫ったということができる。
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