• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

場の量子論の正しい数学的枠組みの探索

研究課題

研究課題/領域番号 17H04837
研究機関東京大学

研究代表者

立川 裕二  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (10639587)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード量子異常 / 位相的場の理論 / 共形場理論
研究実績の概要

この研究テーマは場の量子論の正しい数学的枠組みを探すというものであり、元来の研究計画では、三次元以上の共形場理論を追究することを主に、場の理論のトポロジカルな性質をよりよく理解することを副に据えてあったが、前者のテーマが予想以上に困難であることがわかったため、後者のテーマを主に研究しており、その中でも、特に場の理論の量子異常という性質について注力して研究している。ある次元の場の量子論の量子異常は、一次元高い空間での非常に特別な、物性理論においては「対称性により保護されたトポロジカル相」と呼ばれるクラスの場の理論によって記述されるので、両者を同時に考察することが重要である。

2018年では、質量ゼロのフェルミオン系についてこの性質を丁寧に調べることにより、これまで弦理論においてオリエンティフォールドとよばれる時空で、ディラック量子化条件とよばれる二十世紀前半から知られている基本的な無矛盾性条件が破れているようにみえるという問題が、フェルミオンの量子異常と互いに相殺していることを見出した。また、空間二次元時間一次元のエニオン系の量子異常についても、エニオン系の数学的公理化であるモジュラーテンソル圏への対称性の作用の点から研究を行った。前者のテーマに関しても、三次元の共形場理論への対称性の作用から、共形場理論を公理的に記述する基本的なデータへどのような制限が掛かるかを自動的に書き下すプログラムを開発し、その応用を論じた。

また、場の量子論と数学の関連性について、日本数学会で招待総合講演を行う、また、京都大学で学部学生および大学院生にむけてコロキウムを行うなど、この科研費の研究内容について招待されて紹介を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

元来の研究テーマでは、二次元の共形場理論の公理化である頂点作用素代数の高次元化を考えるというのを主に据えていたが、これは非常に難しいということが判明し、そちら方向の進展は思わしくない。そのため、元来の研究計画で副テーマとしてあった、場の理論におけるトポロジカルな性質のさらなる理解のための研究に注力している。また、研究代表者はこれまで超対称場の理論の研究を主に行っており、そちらの方面の研究も継続しているが、そちらに関してもこれまで等閑に付されていたさまざまなトポロジカルな性質をとりだす研究を行っている。こちらの研究の進展は順調であると思われる。この両者を勘案すると、全体としては、研究の進捗はやや遅れていると判断したい。

今後の研究の推進方策

まずは場の理論におけるトポロジカルな性質の理解を深める作業を続ける予定である。これに関しては、いまのところ色々なケースを個別に行ってきたが、全体に適用可能な統一的な観点が必要である。これには代数トポロジーという数学の分野が必要であるらしいことがわかってきたが、この数学の分野はこれまで理論物理であまり使われていない。そのため、場の理論におけるトポロジカルな性質を代数トポロジー的に調べるというのは有望であると思われる。また、進捗のかんばしくない、共形場理論の公理論的研究の高次元化に関しては、海外の数学の研究者のあいだですこしずつ研究が進んでいるので、これにも何とかついていきたいと考えている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Institute for Advanced Study/University of California, Santa Barbara/Princeton University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Institute for Advanced Study/University of California, Santa Barbara/Princeton University
  • [国際共同研究] Perimeter Institute(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      Perimeter Institute
  • [国際共同研究] Milan Bicocca University(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      Milan Bicocca University
  • [雑誌論文] Why are fractional charges of orientifolds compatible with Dirac quantization?2019

    • 著者名/発表者名
      Tachikawa Yuji、Yonekura Kazuya
    • 雑誌名

      SciPost Physics

      巻: 7 ページ: 058

    • DOI

      https://doi.org/10.21468/SciPostPhys.7.5.058

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Compactifications of 6d N=(1,0) SCFTs with non-trivial Stiefel-Whitney classes2019

    • 著者名/発表者名
      Ohmori Kantaro、Tachikawa Yuji、Zafrir Gabi
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 04 ページ: 006

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/JHEP04(2019)006

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] autoboot: a generator of bootstrap equations with global symmetry2019

    • 著者名/発表者名
      Go Mocho、Tachikawa Yuji
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 06 ページ: 084

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/JHEP06(2019)084

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Comments on the twisted punctures of Aeven class S theory2018

    • 著者名/発表者名
      Tachikawa Yuji、Wang Yifan、Zafrir Gabi
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 06 ページ: 163

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/JHEP06(2018)163

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A study of time reversal symmetry of abelian anyons2018

    • 著者名/発表者名
      Lee Yasunori、Tachikawa Yuji
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 07 ページ: 090

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/JHEP07(2018)090

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The frozen phase of F-theory2018

    • 著者名/発表者名
      Bhardwaj Lakshya、Morrison David R.、Tachikawa Yuji、Tomasiello Alessandro
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 08 ページ: 138

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/JHEP08(2018)138

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 場の量子論の場の量子論による場の量子論のための数学2018

    • 著者名/発表者名
      立川裕二
    • 学会等名
      日本数学会2018年度秋季総合分科会総合講演
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi