研究課題/領域番号 |
17H04839
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
久保 毅幸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (30712666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 加速器 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
ニオブ製の超伝導加速空洞の加速電場は限界に達しつつあり、次世代超伝導空洞開発が急務である。そこで、超伝導積層薄膜構造の導入による加速電場の大幅な(2倍以上の)向上を目指すことが本研究の目的である。申請者は世界で初めて各層の最適な厚みの評価方法を明らかにする等、積層薄膜構造の理論研究で世界を牽引してきた。この優位性を利用して実験的研究を推進する。具体的には、限られた予算を最大限有効に使うため、安価な小型単セル空洞で試験を繰り返す。膜厚に関する広大なパラメータ空間を探索し、理論との比較を行うとともに、最適膜厚を有する空洞の実験において磁束侵入開始磁場の大幅な向上を確認する。本研究は将来の加速器計画の建設費及び維持費の大幅な軽減につながる。 平成29年度は、研究協力者とともに、窒化ニオブ薄膜試料の作成と転移温度測定結果のフィードバックを繰り返すことで、製膜条件の最適化を行った。こうして得られた製膜条件を用いて、ニオブ基板上に二酸化ケイ素と窒化ニオブを製膜し、超伝導積層薄膜構造を持つ試料が得られるようになった。並行して、3GHz小型ニオブ空洞の製作を開始した。ニオブ板材を加工し、プレスとトリムを経てハーフセルを製作した。またビームパイプ用二オブ材及びフランジ用の二オブチタン材も購入した。 また、超伝導体表面に常伝導層または弱い超伝導層がある場合を考え、BCS理論の準古典論による定式化の一つであるUsadel方程式を適用し、超伝導近接効果も考慮に入れた表面抵抗のミクロな理論を構築した。これはMattis-Bardeen理論を内部に含む、より一般的な超伝導表面抵抗理論である。Mattis-Bardeen理論と同様、電磁場が弱い極限にのみ適用可能であり、今後、本研究で扱う超伝導試料を弱い電磁場下で評価する際の出発点となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、小型空洞を製作するためには、空洞の設計やプレス用の金型の設計から始める必要があると考えていたが、米国の研究所(Thomas Jefferson National Accelerator Facility: Jlab)から空洞の図面及びプレス金型を提供してもらう事ができたため、空洞製作を順調に進めることができた。この結果、製膜条件の最適化と理論研究に時間を割くことができ、全てを予定以上に順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
窒化ニオブ・二酸化ケイ素・ニオブ基板からなる試料の評価を行うとともに、平成29年度に製作したハーフセルを電子ビーム溶接で接続することで空洞を完成させる。完成した空洞を用いて、空洞内面への製膜条件の探索も開始する。並行して理論研究も継続する。
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