今年度は、ピエゾ素子を用いた一軸性圧力印加装置を用いたネマティック超伝導の制御の研究を継続して行い、SrxBi2Se3のネマティック超伝導ドメインの制御に初めて成功した。この成果について、招待講演数件を行うとともに、論文を投稿した(プレプリントは https://arxiv.org/abs/1910.03252 )。論文は現在査読中であり、審査員とのやり取りを進めている。さらに、光ファイバーを用いたひずみの多軸測定技術を開発し、ネマティック超伝導体SrxBi2Se3に生じる自発的な異方ひずみを測定した。現在のところ、超伝導相で異方的なひずみが生じているという結果は得られていないが、装置を改善したり、複数の試料を測ったりして、この結果を検証していきたい。 次に、Sr2RuO4の実験では、電流印加によって伝導面内の上部臨界磁場が、通常の4回対称の振る舞いに加えて電流と磁場の方向に依存した2回対称な成分を持つことを確固たるものにするため、微細加工した試料を用いた実験を進めた。冷凍機の調子の問題などがあったが、ほぼ問題も解決し、現在も実験を継続している。データがまとまり次第、論文を執筆する予定である。また、磁性体とのハイブリッド構造や、微細リング構造の性質に関して論文を共同執筆し出版した。 有機物超伝導体(TMTSF)2ClO4の実験では、導入したランダムネスにの効果について招待講演を行い、さらにこの効果をより詳細に調べるための比熱測定装置の開発を継続している。 他に、トポロジカル超伝導の候補であるアンチペロブスカイト酸化物の試料作製・メスバウアー分光・ミューオンスピン回転実験などについて、研究を継続し論文を発表した。また、その過程で発見した新しい超伝導体CaSb2についても論文を発表し、トポロジカル超伝導が起きている可能性を理論家との共同研究で指摘した。
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