研究課題
本年度は、以下の研究を遂行した。①Tb2+xTi2-xO7+yのx=+0.005の試料はモノポール凝集相である四極子秩序を示すことがこれまでの実験から明らかとなっている。今年度は、その粉末試料からKFフラックス法にて単結晶を合成し、立ち上げた比熱測定装置を使って0.3 Kまでの比熱測定を行った。その結果、浮遊帯域法で作成してきた試料とは異なり、四極子秩序を示唆する明確なピークは無く、低温まで連続的な比熱の温度依存性を示すことが分かった。このことは、フラックス合成の単結晶では、酸素量yに組成ずれが起きることが原因と考えられる。すなわち、酸素欠損のためにTbイオンの価数ずれがおきて秩序状態が抑制されたと考えられる。いくつかの試料を測定したがフラックス合成の単結晶はどれも同じふるまいを示した。今後は、適切なアニール条件を見出してこの現象を明らかにすることが重要である。これまでにもアニール条件で比熱の振る舞いが変わったことから、Tb2Ti2O7などのパイロクロア酸化物では酸素欠損が入りやすいと考えられる。よって、応用の面からはパイロクロア酸化物は酸素イオン吸蔵やイオン伝導の面で利用できる可能性が浮き彫りとなった。②スピンアイス磁性体の111磁場下は、カゴメアイス状態という二次元のスピンアイス状態となり、これまでに交流磁化率の周波数依存性が単一の関数形にスケーリングすること等を見出してきた。今年度はそのカゴメアイス相の全域にて交流磁化率の周波数依存性が二次元クーロンガスにおける理論曲線と一致することを明確にした。すなわち、交流周波数の逆数はモノポール相関長の平方根と比例関係にあり、交流磁化率が二次元クーロンガスの分極率の振る舞いと同じになることを明確にした。この結果は論文にまとめ、2021年1月に投稿した。また、研究過程の中でみつけた新物質の研究成果も論文にまとめて発表した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Inorg. Chem.
巻: 59 ページ: 10042-10047
10.1021/acs.inorgchem.0c01213
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 89 ページ: 074801/1-6
10.7566/JPSJ.89.074801