研究課題
本研究の目的は33億年前・8億年前・6億年前の地球磁場強度を高精度に復元し、核の熱史を制約することである。野外での地質調査と磁気測定に加え、ナノ磁性鉱物の形状・配列の3次元観察を組み合わせた研究計画である。平成29年度は磁気測定機器の整備と磁性鉱物観察の手法開発を行い、また一部の試料採取を行った。機器整備としては、磁力計用に産業用ロボットを導入し、試料の置き換えを高精度・高効率に行えるようにした。合わせて独自に設計した試料ホルダーを3Dプリンターで作成し使用することで、試料の磁気異方性をこれまでになく詳細に測定できるようになった。本研究の主たる研究試料は強い磁気異方性を持っているため、地球磁場強度の復元に欠かせない設備である。手法開発としては、レーザー共焦点顕微鏡を用いた観察を行い、ナノ磁鉄鉱インクルージョンのおおまかな配列や数密度を評価できるめどがたち、国際学会で報告した。ただし地球磁場強度の復元に必要な粒子体積の測定精度が足りないことも確認できたため、今後はSEM-FIBとX線CTの活用も進める。試料採取としては、ブルガリアでの野外調査により海底ハンレイ岩を採取した。予察的な古地磁気測定を行い、初生磁化が記録されている可能性が示されている。また、研究協力者らによって、岩石の年代が当初想定していた6億年ではなく約4億年であることがわかりつつある。最近、約4-5億年前の地球磁場が非常に弱いという報告が複数あるため、今回の試料での磁場強度復元も重要である。また、ナノ磁性鉱物の形状とそれに起因する磁性に着目することで、太平洋堆積物中の生物源磁鉄鉱が特異な形状を示す層準をはじめて同定し論文報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は研究設備の整備、観測手法の確立、試験的磁気測定を予定していた。このうち研究設備はおおむね予定通りに整備した。またレーザー共焦点顕微鏡測定によるナノ磁鉄鉱の観察は、磁気測定・X線CT・SEM-FIB間の試料の相対的な方位関係を保持するのに大変有用であり、この観察法の確立は重要な成果である。研究協力者の予定から、平成30年度に予定していた野外調査の一部を平成29年度に行い、代わりに実際の試料の異方性測定や加熱実験を平成30年度に行うことにした。野外調査では順調に試料が採取されており、また試料の測定の準備も整っているので、総合的にはおおむね順調に進展している。
手持ちの33億年前および100万年前の地質試料用いた測定を進める。このうち課題となりそうなものは磁鉄鉱粒子体積の正確な測定である。これはSEM-FIBでも行えるが、いくつかの試料では粒子密度が低く、加工時間が非常にかかることがわかっている。これに対応するために、シンクロトロン放射光を利用したX線CTでの粒子観察も試みる予定である。
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Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 18 ページ: 4558~4572
10.1002/2017GC007127