研究課題/領域番号 |
17H04855
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
臼井 洋一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 研究員 (20609862)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 古地磁気 / 磁鉄鉱 / インクルージョン / 3次元構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去の地球磁場強度を高精度に推定することである。そのために、特に珪酸塩中のインクルージョンの高精度磁化測定法と、ナノスケール磁性鉱物の三次元形状測定法を開発し、天然試料の磁性を定量的に評価する。平成30年度は野外での試料採取と3次元形状測定に向けた基礎技術の開発、および開発した磁気測定技術の堆積物への応用を行った。 野外調査としては、まずブルガリアおよびセルビアにて、約4億年前の年代を持つと考えられている海底ハンレイ岩を採取した。顕微鏡観察および岩石磁気測定によりナノ磁鉄鉱の存在を確認し、国際ワークショップでの発表を行った。また、西オーストラリアにて34億年前の岩石を採取し磁気測定を行った。昨年度までの測定結果と合わせ、この岩石に含まれる磁性鉱物と古地磁気方位との関係を整理し、論文として投稿中である。 三次元形状測定技術については、X線CT測定を行うための高品質な結晶の分離方法を検討し、ハンレイ岩薄片を強酸で処理することで、クラックの少ない斜長石を、伏角は保持したまま分離できるようになった。今後、この手法を改良し定方位試料の形状測定を行うことで、磁気異方性を地理座標で評価することを目指す。 応用としては、遠洋性堆積物を強酸で処理することにより、石英・長石だけを分離し、さらにそれらに高感度磁気測定を行うことで、堆積物供給源に関する新たな情報を得られることを明らかにし、論文発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は試料の採取と、100万年前の試料の古地磁気強度・磁気異方性測定を予定していた。試料の採取については、ブルガリアに加え隣国のセルビアで調査を行うことができ、地質学的に磁化年代を制約できる見込みが高まった。古地磁気強度実験については、まず冷却時の磁場強度変動が古地磁気強度に与える影響を実験的に検討し、短周期の変動は効果的に平均されることが確認できた。従って一定磁場で実験を行うことが妥当であり、測定を進めている。異方性測定は、姿勢変換システムの安定化に時間がかかったが解決済みである。ただし試料ホルダーの磁化を軽減しなければ効率的な測定が難しく、引き続き異なる素材でのホルダー作製を検討する。これらに加え、当初予定にはなかった堆積物への応用研究も射程に入ってきたので、概ね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
試料採取は問題なく進んでおり、継続した作業により平成31年度で完了する見込みである。古地磁気強度測定も概ね確立している。効率的な磁気異方性測定のために、石英ガラス製のホルダーを試作する。仮に低磁化のホルダーが作成できなくても、異方性については繰り返し測定によりホルダーの影響を除去できるため、効率は落ちるものの実験自体は可能である。3次元形状測定は、平成31年度にSPring-8でのCT測定が採択されており、所属機関でのFIB-SEM観察と合わせ定量的な形状決定に挑戦する。
|