本研究の目的は、過去の地球磁場強度を高精度に推定することと、そのための手法として、特に珪酸塩中のインクルージョンを対象としたナノスケール磁性鉱物の三次元形状測定法の開発・適用を行うことである。2020年度は高解像度X線CT測定と古地磁気強度実験を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりこれらの実験の進捗は滞っている。そこでこの間、三次元形状を用いた磁気シミュレーションの実行、整備済みの古地磁気自動測定装置を活用した測定および論文執筆を行いつつ、感染状況が改善次第上記の実験を進められる準備を行った。 三次元形状から磁性を予測する方法としてマイクロ磁気計算が発展してきている。本研究で取得した三次元形状での計算を見据え、まず比較的単純な形状を持つ磁性細菌の研究を行った。磁鉄鉱の鎖を作らない細菌の保磁力を考慮することで、天然試料の磁性を定量的に再現できることを見出した。この結果について国際誌に論文を投稿し、受理に向けて査読コメントに対応中である。 本研究で整備した古地磁気の自動測定装置を用い、南鳥島周辺の堆積物の古地磁気年代を推定した。この海域では、海底資源形成年代として従来オスミウム同位体から年代が見積もられていた。今回、この年代に見直しを迫るデータを得て、これを国際誌に発表した。 X線CT測定や古地磁気強度測定の環境は本研究予算により整えられており、外部機関への出張や集中的な実験が可能になり次第、これ以上の資金なしに実行が可能である。
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