研究課題/領域番号 |
17H04856
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小玉 知央 国立研究開発法人海洋研究開発機構, ビッグデータ活用予測プロジェクトチーム, ユニットリーダー (90598939)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 温帯低気圧 / 雲・降水 / 気候変化 / 高解像度気候モデル / 衛星観測 |
研究実績の概要 |
温帯低気圧に伴う雲・降水システムの気候学的な研究のため、研究の初年度である本年度はモデル検証のためのデータ整備、および解析ツール・方法の検討を行った。 これまで検証に用いてきたマイクロ波プロダクト GSMaP-GPM データに加え、新たにレーダープロダクトであるGPM-DPRデータを整備した。GPM-DPR は GSMaP-GPM に比べて観測の信頼性が高く降水の3次元的構造を捉えることができるという利点があるが、衛星軌道の直下しかデータが存在しない。従って、水平マップデータである GSMaP-GPM に比べてサンプル数が1桁程度少ない。これら2種類の観測データを比較した結果、温帯低気圧に伴う降水量には大きな不確定性があること、モデルが再現した降水量はこの不確定性の範囲内であることが明らかになった。これはモデルの妥当性および精度の高い観測の重要性を示すものでもある。 解析ツール・方法の検討に関しては、研究コミュニティで共同利用されているCOSP(CFMIP Observation Simulator Package)を用いた解析の準備を行った。具体的にはモデル出力に地表面アルベドといった必要なデータ出力を追加した。また、水蒸気フラックスと降水の関係についてレビューを行って解析の準備を進めるとともに、既存ツールを修正して季節毎、個々の温帯低気圧毎に降水量と地上気温の関係を議論できるようにした。 以上の結果を踏まえて投稿中の論文を修正するとともに国際会議において発表した。また、英国の研究グループへモデルデータを提供し、マルチモデルの観点から温帯低気圧の再現性を議論している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で記述したとおり、全体として目標達成に向かって着々と進捗している。当初計画から異なる点として、GSMaP-GPM 降水データの品質についてコメントがあり、来年度以降に行う予定であった現在気候実験の再現性検証の一部を前倒しで実施した点が挙げられる。その結果、観測データの不確定性について理解が進むとともに、モデルの妥当性に対して自信を持つことができた。その分、本年度実施を予定していた極端降水および前線検知ツールの作成については来年度への積み残しとなったが、先行研究のレビューおよび国際会議での情報収集を通じてある程度の見通しが得られている。また、英国グループへのデータ提供は当初は計画していなかったが、マルチモデル解析の結果は今後、国際共著論文としてまとめられる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も温帯低気圧に伴う雲・降水システムの気候学的な理解という全体目標に向かい、基本的には当初の研究計画書に従って着々と研究を進める。その際、地上風速の重要性や国際共同研究の推進など、研究開始後に得られた新たな観点を踏まえて随時、研究計画書を見直しながら研究を進める。
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