研究課題
昨年度まで行ってきた全球非静力学モデルNICAMによる既存の14kmメッシュ気候実験データの解析結果について、信頼性を高める追を高めることで中心気圧は深まるとともに、強風を伴う温帯低気圧の数が増加する傾向があ加解析を行った。昨年度までにモデル結果から見いだしてきた温帯低気圧における地上気温と降水の関係について、観測から確認するために必要となる全球降水観測の年数を明らかにした。また、力学的な特徴がライフサイクルも含めて現在・将来気候でほとんど変化しないことを示した。以上の結果をまとめた論文を出版し、プレスリリースを行った。水平解像度依存性を調べるため、水平解像度56km、28km、14kmメッシュNICAMによるHighResMIP(高解像度モデル比較プロジェクト)気候実験データにおける温帯低気圧の再現性を検証した。その結果、水平解像度ることが分かった。これは低解像度モデルを用いた過去の類似研究の結果を高解像度へ延長できることを示している。一方、過去の研究とは異なり、大雨をもたらす温帯低気圧の数は水平解像度とともに減少した。水平構造を解析した結果、水平解像度を高めると降水分布がWCBの低緯度側へ移動する傾向があり、降水が早く起きることを示唆する結果が得られた。追加的に年スケールの水平解像度7kmメッシュNICAMのデータの解析を行った結果からも、consistentな結果が得られている。さらに、HighResMIP NICAMの現在・将来気候実験データを用いて温暖化応答の初期解析を実施した。その結果、温暖化によって温帯低気圧の数は減少するが、強度の変化はほとんど見られないという従来の研究と整合的な結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究結果の信頼性を高めて論文を出版しプレスリリースを行うとともに、再現性の検証において予定にはなかった7kmメッシュデータの解析を行って結果の妥当性を確かめるなど、大きく進んでいる部分がある。一方、予定していた前線等を基準とする鉛直断面はまだ確認できていないなど、計画から遅れている部分もある。
引き続き、温帯低気圧の構造に着目した再現性検証と温暖化応答の解析を行う。特に、前線の検知プログラムはまだ試作段階であり、高解像度データの前線検知をどのように行うべきかという問題点が残っている。本研究は前線検知自体を対象としていないため当面は低解像度データに変換した上で解析する予定であるが、長期的には高解像度データの時代における前線検知アルゴリズムの再検討は重要な課題である。また、極端降水や極端風の統計的な解析を進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Geophysical Research Letters
巻: 46 ページ: 12435~12444
10.1029/2019GL084001
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20191114/