研究課題
前期原生代の地層からは真核生物と解釈される形状化石が複数報告される。この時代は全球的に大気海洋が酸化的になった時代とされており、その大気海洋の酸化に応じて酸化還元鋭敏元素の濃度変化が起こったことが期待される。本研究では真核生物が多量に必要とする銅・亜鉛の海洋内における濃度変遷を調べる事を目的としている。当該時代の海洋の痕跡を保存している岩石を連続採取するために、ガボン共和国フランスヴィル地域周辺にて陸上掘削を行った。掘削試料から作成した粉末試料を用いて、王水による酸処理、イオン交換の後、銅・亜鉛同位体比測定を行った。しかし、イオン交換の過程で同位体分別が起きている事が確認された。特に銅同位体比に関してはほぼ全ての試料で分析の再現性が確保されなかった。これは岩石試料中のCuがFeに比べて圧倒的に少ないために破過を起こしてしまう事、岩石中の有機物の分解が不完全であり、有機物がイオン交換樹脂中で反応を起こし、溶離曲線が変化した事などが原因として考えられる。亜鉛同位体比については試料数としては少ないながらもいくつかの分析点を得る事ができた。それらのデータに基づくと、前期原生代海洋中の亜鉛濃度は太古代に比べると上昇している様子が見て取れた。上記銅・亜鉛同位体比の分析が当初予定に比べて芳しくないため、炭酸塩岩の希土類元素(REE)濃度を測定した。これらは海洋の情報を保持していると考えられ、Ceから見て酸化的な環境が局所的に存在していた事が明らかになった。また、今は炭酸塩として存在するMn鉱床も元々は酸化物として沈殿した証拠を得る事ができた。これらはいずれも前期原生代の海洋にも現在に類するほどの酸化的環境が局地的に存在していた事を意味する。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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