研究課題
生物撹拌とは,底生生物によって海底堆積物が混合される現象である.これまで地質学の分野では,生物撹拌は地質記録を乱す“悪者”として忌み嫌われてきた.しかしながら,地質記録のほぼ全てが生物撹拌により混合されているのも,また事実である.生物撹拌の影響する深さ(混合層の厚さ)を認識することなしには,地質記録がもつ古環境・古生態情報を正しく理解することができない.一方で,生物撹拌を受け初生の堆積構造が失われている地層においても,生痕相(生痕化石の種組成)を解析することで古環境復元が可能であることが知られている.本研究では,生物撹拌に関するこうした正と負の側面を統一的に理解する.すなわち,堆積環境・生物撹拌&・生痕相という3者の関係性を北西太平洋全域の海底堆積物を対象に調べる.今年度で研究対象とした海洋堆積物コアは,これまでの調査(KH-19-6白鳳丸航海,南東太平洋の5地点)で既に採取済みのものを用いた.採取した堆積環境は全て水深3000メートルを超える深海平原である.各地点の海底表層堆積物は珪質泥,赤色泥,石灰質泥などからなり,その構成物は地点毎に明瞭に異なる.生痕相を比較したところ,地点毎にその構成種に違いが見られた.コアの堆積物の14C年代測定も実施したところ,生物攪拌による混合層に関しても,地点間で違いが見られた.このように,一様の環境と思われがちな深海平原においても,生物攪拌・生痕種が異なることが判明した.この性質をさらに詳細に解析することで,堆積層から生痕相さえ認識できれば,堆積環境および生物撹拌の強度(混合層の厚さ)を復元できる基準を創成していく予定である.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 備考 (1件)
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