生痕化石の解析に基づく古環境復元の有用性は広く認識され,今日では堆積学,古生物学,そして資源探査の分野で活用されている.しかしながら,生痕化石から古生態・古環境情報を正しく得るためには,まず現世の生痕についての知見を得て検証する必要がある.なぜなら,化石記録のみからの知見では推測の域を出ず,場合によっては循環論にもなりうるからである.しかしこれまでの現世生痕研究は,潮間帯などの極めて浅い環境で行われたものが大半であった.本研究では,海面下の堆積場―大陸棚や陸棚斜面,海溝,そして深海平原などの現世生痕を調べ,対応する海成の生痕化石について多くの重要な知見を得た.
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