研究課題
超高温高圧環境の地球中心から地表までの間に存在する大きな熱勾配は融体金属からなる地球外核と固体マントルの対流を引き起こし、約40億年間続くとされる地磁気の生成やプレート運動などの地球のダイナミクスの原動力となっている。熱伝導率は地球内部の温度構造と熱進化、ダイナミクスを探るための基礎的な物理量であるにも関わらず、実際の地球中心核の温度圧力条件での測定例は殆ど存在しない。本研究の目的は、地球の核を構成する鉄ー軽元素合金の熱伝導率を実際の地球中心核の温度圧力条件で実測することである。実験で得られた核構成物質の熱伝導率から初期地球温度や地球内部の冷却過程、内核形成時期などの地球の熱進化に制約を与える。研究代表者がこれまでに培った高温高圧下その場熱伝導率測定手法を用い、様々な化学組成の鉄ー軽元素合金を対象に広い温度圧力範囲における高確度かつ高精度の熱伝導率データを蒐集する。平成29年度は地球中心核の主成分である純鉄を試料として、その熱物性に関する研究を行った。その結果、純鉄の熱伝導率には大きな結晶方位異方性があることがわかった。また、結晶方位異方性を考慮しても先行研究との相違が説明できないことから伝統的に用いられていた金属の熱伝導率と電気抵抗率との関係式に補正が必要な可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の研究のゴールとして設定した地球中心核条件での六方最密充填構造の鉄の熱伝導率測定にはまだ至っていないが、実験手法の高精度化や、結晶方位を考慮した熱物性研究など、今後の研究に活かすことが出来る研究の進展があった。特に、内部抵抗加熱法を導入したことによって、これまでのレーザー加熱による高温発生よりも温度勾配が小さく、加熱安定性の良い実験を行えるようになった。
平成29年度に本研究課題を遂行する上で必要な技術開発の殆どが完了したといってよい。次年度以降は指導学生と分担し、さまざまな鉄合金の高温高圧下での高精度・高確度熱伝導率測定実験を行って行く。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
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