研究課題/領域番号 |
17H04876
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
栗原 顕輔 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任准教授 (80740919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液滴 |
研究実績の概要 |
太古の地球上ではじめて誕生した原始生命・原資細胞は、その個体を増殖させるために、自己触媒的に自己再生産する分子システムであったと考えられる。本年度では単純な分子を出発物質とする原始細胞モデルの創成を目指して、単純な原始細胞は明確な境界膜を持たず、緩やかな境界を持っていたと仮定し、水中で再帰的にかつ自己触媒的に自己再生産を行う液滴の構築を試みた。 我々は水中で自発的なペプチド生成反応を行うようなチオエステル化シスチンを設計・合成し、ペプチド生成を伴いながら水中で分子集合体を形成することを微分干渉顕微鏡にて確認した。分子集合体は球状かつ融合を頻繁に行うことから液滴であると判断した。 この液滴に、同じチオエステル化シスチンを再添加すると、液滴が繰り返し肥大・融合・分裂ダイナミクスを起こすことを動的光散乱にて見いだした。液滴は一定の大きさまで肥大して平衡に達することも同時に確認した。 一方で液滴は液-液相分離を示した。これは液滴の外水相に、疎水性の高いリン脂質、または水溶性高分子であるRNAやDNAなどのような核酸を混合すると、脂質を液滴の内側領域に、核酸を液滴の外側領域に取込むことから明らかになった。また液滴に取り込んだ分子を放出することなく、さらに外部の分子を取込・濃縮していくことも蛍光顕微鏡から判明した。さらに脂質のみの濃縮では液滴のサイズは小さくなるが、RNAと添加することでサイズは保たれたままであった。これは液滴の外側に存在するRNAやペプチドが、裏打ち構造のように液滴を補強することで、液滴の堅牢性を保っているのではないかと推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた分子群ではベシクル型人工細胞を予定していたが、反応系を改良し、チオエステル交換反応に変更したため、情報分子であるRNAやDNAを外部より添加するシステムに変更した。現在は液滴が核酸を取り込む際の、核酸の鎖長などを検討し、情報分子が液滴に及ぼす影響を探索している。
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今後の研究の推進方策 |
液滴の脂質や核酸の取り込みが、液滴の構造に依存するのかどうかを確かめることを予定している。液滴の内部構造を明確にするために、レーザーラマン顕微鏡によるイメージングの実験を行う。またこれまでの研究結果をまとめて、論文を執筆する予定である。
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