研究実績の概要 |
本研究では、Troeger's base骨格の高効率開環反応を鍵とした、1,5-ジアザシクロオクタン構造を主鎖に持つ、柔軟かつ高規則的という新しい構造特性を有する 新規ラダーポリマーの開発と物性研究を行っている。平成29年度には、エタノアントラセン骨格を有するジアミンモノマーからTroeger's base形成重合により得られるラダーポリマーに対し、ジメチル硫酸とNaOHを作用させることにより、二級アミン構造を有する1,5-ジアザシクロオクタン構造を主鎖に持つラダーポリマーを得た。しかし、上記論文で親ポリマーとして用いたPIM-EA-TBは、エタノアントラセン骨格を有するジアミンモノマーが、異性体の混合物であり、構造不規則性をもつ。そこで、平成30年度には、市販の単一のジアミンモノマー(2,5-ジアミノ-p-キシレンなど)から得られるTroeger's base含有ラダーポリマーの合成と開環反応について検討を行った。2,5-ジアミノ-p-キシレンから得られるラダーポリマーに関しては一段階の反応では完全な開環は達成されなかったが、開環反応を繰り返し行うことで開環率を向上させることができ高対称性のラダーポリマーが得られた。その過程で、1,5-ジアザシクロオクタンの二級アミン部位へのヨードメタンなどでのN-メチル化は、四級化体を生じることなく効率的に進行し、さらに構造対称性を向上させることにも成功した。このポリマーの溶液物性、ガス吸着測定、ガス選択透過性、熱物性などの調査を行っている。これに加え、1,5-ジアザシクロオクタンに対し、ホウ素化合物などのルイス酸を作用させることで、コンフォメーションの固定化が起こり、コンフォメーション挙動の変化が可能であることも見出した。これらの成果を元に、招待講演3件を含む計11件の学会発表を行うに至った。
|