主鎖に沿って二本以上の化学結合を有するラダーポリマーは、多重の化学結合に由来する優れた熱安定性・力学特性を示す。これまでに合成されてきたラダーポリマーはいずれも極めて剛直な主鎖構造を持つものばかりであるが、最近我々は、トレガー塩基(TB)含有ラダーポリマーの高効率な変換反応により、環反転可能な柔軟なコンフォメーション変化を示すジアザシクロオクタン(DACO)含有ラダーポリマーの合成法を開発した。具体的には、TB含有ラダーポリマーをヨードメタンやジメチル硫酸などによりメチル化し、その後、NaOH水溶液に浸漬すると速やかにアミナール部位の加水分解およびホルムアルデヒドの脱離が生じ、DACO含有ラダーポリマーが定量的に得られた(ACS Macro Lett. 2017)。この成果は「Mission Accomplished: Synthesis of ‘Flexible’ Ladder Polymers」としてSynfacts誌にてハイライトされた。メチル化以外にも、対応するアルキルブロマイドを作用させることで、ベンジル基やアリル基、αカルボニル基などの導入が可能であり、得られたDACO含有ラダーポリマーの2級アンモニウム塩部位に対しても同様のアルキルハライドで定量的に3級化可能であることも見出した(Polym. Chem. 2020)。さらに、DACO骨格は、二つの近接した窒素原子を持つため、適切なルイス酸を作用させることにより、二つの窒素原子をルイス酸で再び架橋し、剛直なヘテラTB含有ラダーポリマーへと可逆的に変換可能であり、主鎖の剛直性が変化するユニークな刺激応答性ラダーポリマーとして機能する(Polym. Chem. 2020)。以上本研究を通じ、柔軟性DACO含有ラダーポリマーの開発や機能開拓を世界に先駆けて行った。
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