研究課題/領域番号 |
17H04882
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
南 豪 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (70731834)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 化学センサ / 分子認識化学 / 多変量解析 / センサアレイ |
研究実績の概要 |
本研究では,超簡易な多成分分析の実現に向けて,人工分子レセプタを修飾した有機トランジスタ型化学センサアレイによるハイスループット (=迅速同時分析) 分析法の提案と,その具現化を目的とする。平成30年度は,昨年度作製に成功した極めて小さな印加電圧(<0.5 V)で作動するOTFTを用いて,水中におけるセンサとしての応用可能性を検討した。OTFTの水中における応答を様々なpH条件下で検討した結果,弱酸性から生理学的pH条件下においてもセンサとして機能することを見出した。OTFTは繰り返し測定を行っても劣化を起こすことなく安定的に作動していた。さらに,水中における生体分子種の多変量解析(主成分解析,線形判別分析,サポートベクターマシンなど)を目指し,水溶液中における生体由来アミンの検出を行った。生体由来アミノ酸には,ヒスタミン, ヒスチジン, プトレシン, チラミンを用いた。OTFTは形成された分子認識場によりアミン類の化学構造に依存した応答を示し、ヒスチジンが最も高い応答を示した。また,アミン類に対して得られた応答は多変量解析を行うのに充分なものであった。これらの結果は,標的種を網羅的に検出し得る人工レセプタライブラリーを用いることで,OTFTが水中かつ低印加電圧において生体由来化合物に対して交差応答性を示し得ることを示唆している。現在は,有機トランジスタに基づくアレイシステムの構築に向けて,作製したトランジスタ型化学センサを集積した小型のアレイの構築を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製したOTFTデバイスが水中においてセンサとして機能することを見出した。実際に,OTFTデバイスは形成された分子認識場により、生体由来アミンの化学構造に依存して異なる応答を示した。得られた結果は既に学術論文及び学会等で発表を行っている。また,採録論文は国際的に高く評価され,英国王立化学会のChemComm Emerging Investigators Issue 2018に選定され,代表者の研究歴が紹介されただけでなく,ChemComm公式SNSアカウントにて宣伝された。更に,学会発表や研究業績対して複数の賞を授与された。加えて本結果は,交差応答性を示す有機トランジスタ型センサアレイシステムの構築に対して重要な知見を与えるという点では当初の計画通りに進捗していることから,現在まで概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヒト由来サンプルを用いて,疾患の指標となる生体分子種(タンパク質,核酸,低分子化合物)に対してもOTFTによる検出を検討する。また,デバイス構造に基づいた小型化・集積化を行い,デバイス安定性を評価する。さらに,センサアレイを作成してヒト由来サンプルに対して同時多成分分析を行い,有機トランジスタ型センサアレイシステムの有用性を検討する。
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備考 |
2019年3月学生講演賞(日本化学会), 2019年1月わかしゃち奨励賞, PJハイライト論文, 2018年11月 Poster Award, 2018年9月 Publons Peer Review Awards 2018, 2018年8月 クリタ水・環境科学研究優秀賞, 2018年7月ヤングサイエンティスト講演賞, 2018年6月 ChemComm Emerging Investigators
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