マイクロ流路中で溶液の吸収スペクトルを測定するデバイスの開発に向け、光ファイバを用いた干渉計を構築し原理を検証した。平成29年度は可視光レーザーを用いて干渉計の構築を試みたが、コヒーレンス長が短く干渉させることは困難であった。そこで平成30年度に新たに赤外レーザーを購入して干渉を試みたところ、干渉させることはできたものの、光ファイバの微小振動の影響で極めて不安定な干渉しか得られなかった。そこで、光ファイバを短く切り詰める、風よけを設置するなどの工夫を施した結果、安定した干渉が得られるようになった。更に原理検証のため、励起レーザーを用いて試料を加熱しその屈折率変化を干渉計で検出することを試みた。この際、マイクロ流路を有するデバイスは作製せず、バルク空間で試料液滴を用いることによって信号の取得を試みた。その結果、試料が励起レーザーを吸収することによって発した熱に由来する信号を検出することに初めて成功した。この結果を、これまでに開発してきた導波路を用いたデバイスと比較した。導波路を用いたデバイスの場合、試料溶液中で発生した熱が熱拡散によってガラスに伝達したものを検出していたため感度が低かった。一方、本実験で得られた信号の強度は導波路デバイスと比較して1桁向上していた。このことから、溶液中に発生した熱を直接検出することにより感度を向上するという本研究の基本戦略を実証することに成功したと結論づけた。
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