研究課題
吸光光度法は化学やバイオの基礎をなす分析法の一つであるが、マイクロ流体チップをはじめとする微小空間では光路長が短いために適用が難しい。そこでマイクロ空間で高感度に吸光度を検出するために光熱変換分光法が研究されてきたが、原理的にレーザを必要とするためにスペクトルの測定は困難であった。一方、研究代表者らは光の分離・干渉を用いて光熱変換効果を検出する光熱変換光位相差(POPS)検出法を独自に開発してきたが、POPS検出法は幾何光学ではなく波動光学に基づいているから、インコヒーレントな光源を用いて誘起した光熱変換効果を検出できるのではないかと着想した。そこで本研究の目的は、マイクロ流体チップに光ファイバを埋め込むことによってPOPS検出を高感度化し、光路長1cmと同等のスペクトル測定を光路長100 umで実現することとする。前年度に引き続き、検出条件を最適化し、スペクトル測定を実証することを目的としたが、2つの問題が存在することが分かった。まず、本研究の検出原理を実現するためには弱め合う干渉の状態を長時間にわたって安定化させることが必須であるが、振動や気流の対策を施しても干渉が安定せず、一定の信号値を得ることが難しかった。これに対しては、検出光の強度を測定し、サーボを用いて位相差を調整するようなフィードバック制御が一般に用いられるが、近年ヘテロダイン干渉法を応用したより簡便な測定法も開発されている。そこで、光音響変調システムを導入して実験を継続している。また、信号が干渉に伴って発生することを証明するのが難しい。そこで、一対の光ファイバをデバイスに挿入して光熱変換信号を測定する系を作製し、屈折や散乱といった干渉によらない光熱変換信号を測定し、二対のファイバを挿入したときの結果と比較することによって、干渉によって発生した信号を定量できないか検討しているところである。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Applied Physics
巻: 132 ページ: 060902~060902
10.1063/5.0097665