本年度は、クルードタンパク質メトリクスのための材料の洗練化および培養細胞のオンライン評価へ適用を目指したデバイス化を推進した。まず前年度に検討を行ったダンシル基修飾ポリリジンを配置したアレイが、細胞表面タンパク質等の組成を反映した応答パターンの獲得にも利用できることを見出した。また、環境応答性蛍光団を修飾したDNAを配置したアレイを新たに開発し、血清中のタンパク質-タンパク質相互作用に関する情報を簡易に抽出することに成功した。任意の配列の蛍光修飾DNAが容易に入手可能なことを考慮すると、高い拡張性を有する本アプローチは、複雑なタンパク質性試料の特性評価のための強力な基盤ツールになると期待できる。以上のように、多角的な試行の結果、クルードタンパク質メトリクスのための大規模な材料ライブラリ、および、それに適した材料の設計・拡張指針を得ることに成功した。さらに、本技術の応用範囲を拡大することを目的として、マイクロ流体デバイスへの系の搭載を推進した。具体的には、これまでに得てきた知見をもとに、タンパク質と多様に相互作用可能なアミノ酸誘導体を固定化したマルチチャネル型の表面プラズモン共鳴(SPR)チップを作製し、これをジメチルポリシロキサンからなるマイクロ流路と接合させたデバイスを構築した。肝臓がん細胞(HepG2)を様々な条件で薬剤処理した後に得られた“細胞分泌成分を含んだ培地試料”を、この流体デバイスに流入させた結果、細胞の生死に加え、状態や活性の差異を反映したSPRパターンを取得することに成功した。このデバイスは、わずかな試料(~25 μL)で迅速(~10 min)かつ非破壊的に細胞の状態情報を出力することを可能にするため、細胞チップ等との接続によるオンライン細胞評価などへの応用が期待できる。
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