研究実績の概要 |
本研究では、標的となるタンパク質・測定対象に与える影響を最小限にしたタグペプチドによるタンパク質標識を目指し、新奇なCross-linked Protein-derived Cofactors (CPDC)を持ったペプチドの開発を行う。金属結合ペプチドにおいて、金属による酸化的自己修飾反応を制御し、翻訳後化学修飾を誘起して自発的に形成される新たなクロモフォア、フルオロフォアを持った人工タグペプチド配列の検索を行う。本研究は、緑色蛍光タンパク質を基盤とした改変とは異なり、10残基程度のペプチドを土台として、自発的に形成される蛍光団や発色団をもつ革新的ペプチドの創製を試みるものである。 本年度も昨年度に引き続き、金属結合部位として銅もしくはニッケルイオンに対して選択的に結合するATCUN(Amino Terminal Cu(II)- and Ni(II)-binding Motif)配列(X1-X2-His)に着目した。第1段階として、分子量10kDa程度のタンパク質のN末端にこれら配列を結合させ、Niセファロースを用いてその結合から金属結合能を評価した。また、Xの位置のアミノ酸を最適化しながら、アフィニティークロマトグラフィーによるワンステップ精製が可能であることを確認した。結合配列の進捗に合わせてATCUN配列後の数残基に二つのアミノ酸を導入し、その組み合わせと挿入位置を変えることで、チロシンダイマーの形成に挑戦した。天然で見られるCPDCの構造から、自己修飾によって生じた簡単なPDCが二種類の反応経路5残基のなかに位置を代えながら2つのチロシン残基を導入し、その参加反応物を分析した。これに加え、金属結合ペプチドの配列を用いるとともに、リンカー部位の配列・長さ(1-3残基, Gly, Ser, Gly-Gly, Gly-Ser, Gly-Gly-Gly, Gly-Gly-Ser)の最適化を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、結合配列の進捗に合わせてATCUN配列後の数残基に二つのアミノ酸を導入し、その組み合わせと挿入位置を変えることで、天然にはないCPDC 形成に挑戦する。天然で見られるCPDCの構造から、自己修飾によって生じた簡単なPDCが二種類の反応経路(Path A:キノンもしくはカルボニル化合物への求核付加反応, Path B:水素原子引き抜きに伴って生じたラジカル分子のラジカルカップリング)で生成すると考えられる。そこで、前者ではCys, His (Lys, Tyr)などの求核性ア ミノ酸を導入したペプチドを作製し、架橋構造形成の有無を確認する。また、後者では、近傍にTyrやMetを追加導入し、いくつかの金属結合ペ プチドの配列を用いるとともに、リンカー部位の配列・長さ(1-3残基, Gly, Ser, Gly-Gly, Gly-Ser, Gly-Gly-Gly, Gly-Gly-Ser)の最適化を行うことで反応効率を向上させる。さらに最適化したペプチドをモデルタンパク質に導入し、その形成がタンパク質上で可能か確認する。
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