研究課題/領域番号 |
17H04894
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本山 宗主 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (30705752)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リチウムイオン伝導性固体電解質 / その場SEM観察 / Si / Au / Pt / 反射電子像 / 合金化・脱合金化反応 |
研究実績の概要 |
高Liイオン伝導性LATPシートの両面に同じくLiイオン伝導性のリン酸リチウムオキシナイトライドガラス(LiPON)電解質を成膜し、複合固体電解質を作製した。その後、片側のLiPON表面にSi薄膜をRF マグネトロンスパッタリング法で成膜し、反対側のLiPON表面にLiを蒸着した。作製したSi/LiPON/LATP/LiPON/Li構造の薄膜試料をその場走査型電子顕微鏡(SEM)観察用電気化学セルとした。 次に、Si薄膜をSEMの中で充放電し、その反応過程をその場観察した。しかし、Siの電子伝導性が低いために、充放電に時間を要し、体積の膨張収縮過程をSEM観察に適した時間スケールの中で観察することができなかった。 そこで方針を変え、原子番号が13のSiではなく、AuやPtなどの原子番号が大きい重金属で同様の実験を行なった。その結果、反射電子像観察を行う中で、Liとの合金化反応の進行にともない、Au表面で刻一刻と変化するLiの組成分布を動的に捉えることができた。Liの原子番号は3である一方、AuとPtの原子番号はそれぞれ79, 78であり大きく異なる。そのため、輝度が原子番号の大きさによって決まる反射電子像観察の中で、高Li組成な領域が暗く見え、低Li組成の領域が相対的に明るく見えた ものと推察される。 その他、学会での口頭発表を主著者として8件行った(国際学会2件)。共著者としての発表はすべてポスター発表であり、4件行った(国際学会2件)。また、1件は、“1st World Conference on Solid Electrolytes for Advanced Applications: Garnets and Competitors”で共著者としてポスター賞を受賞した。書籍への執筆は1件行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Si薄膜の電子伝導性が低かったため、充放電反応中のSi薄膜表面をSEMの中でその場観察する実験が、当初の計画より難航した。具体的には、定電圧定電流充放電試験を行なったが、Siの電子伝導性が低いため、充放電開始後、カットオフ電圧にはすぐに達するが、その後の定電位保持時間が極めて長くなるという問題が生じた。一方、充放電レートを小さくすると、そもそもカットオフ電圧に達するまでに数時間以上の時間を要するため、観察の間、電子線が安定しないというジレンマに陥った。また、たとえLiと合金化させた後でも、反射電子像の中で、高Li組成領域と低Li組成領域の間に明瞭なコントラスト差が認められなかった。Siが軽元素であるため、Liとの間にコントラスト差が生じにくかったものと推察される。そこで、研究計画の変更を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、SiとLiは原子番号が比較的近いために、反射電子像観察をする上で高Li組成相と低Li組成相の間にコントラスト差がつきにくいことがわかった。そこで、Siの代わりにAgを用いることとする。Agの原子番号は47であ理、Siに比べ、3倍以上、原子番号が大きい。そのため、原子番号に依存する反射電子像の中で、Liと濃度(組成)分布を捉えやすいと考えられる。また、Agは、インクジェットプリンターを用いて様々な微細パターンを描画する材料として適している。Agの細線電極をLiPON上に描画する。Agの合金・脱合金化反応をその場観察すれば、細線状のAgが膨張収縮する過程をより容易に観察することができると考えられる。 また、上記の実験と並行して、温度可変式のその場SEM観察用ホルダーの自作に取り組む。SEMの中で温度を変えながらその場観察する実験を進める。核生成密度に及ぼす温度の影響を解析し、解釈を与え、検証する。
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