Auを集電膜に用いたことで、リン酸リチウムオキシナイトライドガラス(LiPON)固体電解質上でLiとAuの合金化反応の過程をμmスケールで動的に観察できた。その結果、Liの核生成後、一部の核がAu集電膜中に再溶解することを明らかにした。 次に、同じその場走査型電子顕微鏡(SEM)観察技術を用いてTa-doped Li7La3Zr2O12(LLZT)上のLiの析出溶解反応を動的に観察した。LLZT表面には炭酸リチウムや水酸化リチウムを含む不純物層が形成される。そこで、LLZTを使用する場合、通常、不活性雰囲気中で表面を研磨し、炭酸リチウム層を除去する。 その場SEM観察を行うことで、研磨したLLZT表面からは、Liが析出しないことがわかった。さらに詳しく調べたところ、研磨時に表面層が削り取られ、結晶粒が露出している箇所からLiが優先的に成長していることがわかった。一方、LLZTを塩酸に短時間浸漬させることで表面の不活性な研磨層を除去できることがわかった。また、LLZTを酸水溶液でエッチングした表面は、Liに対し高い濡れ性を持つことがわかった。Liの析出溶解サイクル試験を行ったところ、塩酸に浸漬させたLLZTは、SiC研磨紙で研磨したLLZTに比べ、サイクル安定性を示すことが明らかとなった。 その他、学会での口頭発表を主著者として7件行った(そのうち国際学会での口頭発表が4件、国際学会での招待講演が2件)。共著者としての発表はすべてポスター発表であり、4件行った(すべて国際学会)。なお、“22nd International Conference on Solid State Ionics”(韓国、平昌)で共著者としてポスター賞を受賞した。書籍への執筆は1件行った。
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