通常、光が媒質を伝播するとき、前向きと後向きの光の透過率や旋光度、二色性などは全く同じになる (相反性)。光導波路内で逆行する戻り光が光源を不安定化することを抑えるために、戻り光を抑制する非相反性素子、「光アイソレータ」が用いられる。最近では、デバイスの軽量化・省スペース化のために、光導波路内でレーザーと光アイソレータの一体化が試みられている。一方、量子情報技術で必須となる単一光子で動作する光スイッチやレーザー光源などの極限デバイスには微小球共振器が重要な役割を果たすと考えられている。三次元全方位レーザー素子である微小球を光アイソレータで包めば三次元光導波路のレーザー光源となるはずである。 本研究では、コレステリック液晶 (N*) シェルの全方位円偏光レーザー発振の効率化と、磁気円二色性 (MCD) の向上のための、液晶に特有の磁気特性の起源の解明について、研究を行ってきた。2017年度と2018年度において、NR 部位のMCD ピーク波長に発光ピークを持つ色素をNRN*液晶に添加しDFB レーザーの共振器として機能するか確かめた(論文投稿中)のに続き、液晶相においてもMCDが起こることを示すために、MChDスペクトルの測定に成功したため(投稿論文準備中)、当初の目標は達成した。これに加えて、液晶の磁性が分子の電気双極子と分子運動に依存することをすでに報告してきた(J. Mater. Chem. C 2017; J. Phys. Chem. B 2018)。 本年度は、これまでの研究を発展させて、磁場によるレーザー発振の制御(Opt. Express 2019)と、光による液晶の磁性の制御(Commun. Chem. 2019)について報告した。
|