今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き,熱鋭敏化したオーステナイト系ステンレス鋼SUS304を用いて,以下の二点について研究を推進する. 1)粒界構造と粒界腐食感受性の関係の検討:粒界近傍について高分解能でEBSDを用いた結晶方位測定および電子線プローブアナライザ(EPMA)を用いた元素濃度測定を行う.試験片の研磨と上記測定を繰り返し,三次元的な粒界構造を明らかにしてから腐食試験を行う.腐食試験後に再度,EBSDおよびEPMAによる粒界構造の評価を行い,粒界腐食と粒界構造の関係を明らかにする.これまでの実験結果(Fujii et al., Materials, Vol. 13, 2020, 613)では,単一粒界中で一部のみが腐食され,残りは腐食されない場合があることが判明していることから,腐食が停止した近傍について集中的に微視組織の評価を行い,粒界の局所的な構造と腐食の関係について検討する.次いで,可能であれば,マイクロメートルオーダーでの粒界腐食のその場観察を行い,腐食挙動と粒界構造の関係についても評価を行う. 2)粒界構造に基づくSCCき裂発生・進展特性の再評価:これまで実施してきた試験片(SCCき裂発生およびき裂進展)のSCCき裂近傍について高分解能でEBSDおよびEPMAを用いた微視組織の評価を行う.上述の粒界腐食と粒界構造の関係と比較し,粒界構造とSCCき裂発生・進展挙動の評価を行う.最終的に,力学量と粒界を特徴づけるパラメータを用いて,き裂発生・進展を記述する条件を定式化する.
|