研究課題/領域番号 |
17H04900
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
道畑 正岐 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70588855)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光放射圧ポテンシャル / ナノ加工 / ベッセルビーム / ハイスピードカメラ |
研究実績の概要 |
本研究は、集光レーザを用いた微細な金属3次元構造創成技術確立を目的としている。具体的には、金属ナノ粒子を集光レーザビームウェストに位置変動10nm以下で局所化、集積化による三次元構造の実現を目指している。その加工原理検証のための基礎実験を実施した。まず、アキシコンレンズとリレーレンズ系により構成された光学系によりベッセルビームを構築した。最終的には集光ビームを用いた加工を想定しているが、光放射圧ポテンシャルによる粒子の集積加工の基礎原理を検証するため、光伝搬方向に強度分布がほぼ変化しないベッセルビームを用いてる。そのベッセルビームによる光学系によって、空気中に散布した直径1μmの微小ポリスチレン粒子を含むミストを散布し、そのミストを捕捉集積した。結果として、ベッセルビームの強度分布に沿い直径1μmの微小ポリスチレン粒子を積み上げたピラー構造を加工することができた。この加工の様子を、光速度カメラで側方から観察することで、光放射圧ポテンシャルによる集積過程を可視化するシステムを構築した。それを用いて観察した結果、十分遠方から収束ビームにより引き寄せられる粒子、もしくは流れによって運ばれる粒子が、ベッセルビームのポテンシャルに入ると急速に加速し、集積されていく様子を観察できた。今後は、ミストの蒸発過程を含めた観察を実施する予定である。また、ベッセルビームによって駆動する力などを、数値解析により解析した。その結果、ミストの流れの速度が約10 mm/s程度以下であれば、集積することが期待でき、実際に実験と比較した結果、良い一致を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、サブ100 nmの金属3次元構造の創成である。2年目となる今年度は、ベッセルビームを用いた金属ナノ粒子の2次元局所化に関する原理確立、および、ハイスピードカメラによる集積構造化原理の確立を計画していた。 ベッセルビームによる光学システムは構築し、直径1μmのポリスチレン粒子による2次元局所化は既に高い再現性で加工できることを確認した。また、この成果は日本機械学会誌に学術論文として投稿し、掲載された。一方で、ナノ粒子を用いた実験はやや遅れており、装置周りの安全性を確保したのち実験を行うことを予定している。また、ハイスピードカメラによる集積構造化原理の確立に関して、観察装置を含めたデバイスの工夫により高解像度での観察が可能となり、再現性よく加工できる際のミスト散布条件などのノウハウを蓄積することができた。高速度カメラによる観察システムは既に構築できたため、ナノ粒子の集積加工の実現に合わせて、加工原理の追求を次年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
【ベッセルビームを用いた金属ナノ粒子の2次元局所化に関する原理確立】 これまでに直径1μmのポリスチレン粒子による2次元局所化は既に高い再現性で加工できることは確認できた。今年度は、ナノ粒子による実験を行う。ナノ粒子の場合、加工した構造物を光学システムによるインプロセス観察が難しいため、加工からSEM観察までのプロトコルを確立する必要がある。それを踏まえ、これまでのノウハウを用いることで、ナノ粒子の構造物を加工し、100 nm以下の構造線はばを目指す。 【集光ビームを用いた3次元構造化加工原理の確立】 これまでの加工はベッセルビームを用いてきたが、集光ビームを用いた加工を実現することを目指す。集光スポットを走査することで、3次元的な加工が期待できる。そのために、まずは1点での加工を行い、そこで、ミスト供給の最適化を行う。それを踏まえ、走査による複雑形状の加工を目指す。
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