研究課題
本研究の目的は液滴が固体表面に衝突する際に液滴と固体表面との接触面に働く力分布を直接に計測することで,液滴と固体表面との衝突に関する力学モデルを構築することである. 令和元年度の研究計画は温度と光の影響を受けない計測手法の確立と衝突時に液滴の接触面に発生する圧力の最大値との液滴のサイズとの関係を明らかにする.最初に液滴がセンサ基板に衝突する際,基板の温度変化と液滴の影による光の変化の影響を無くすために,光・温度補償素子をセンサ基板に設計・製作した.この素子は力センサアレイと同じピエゾ抵抗をもつが,素子の直下に貫通穴が設けられないので,光と温度の変化には反応するが,力には反応しない.実際に温度・光補償素子を有するセンサアレイを試作し,計測を行った結果から温度と光の影響を無くすことで,衝突時に液滴の接触面の圧力分布を正確に計測できることを検証した.次に,衝突時に液滴の接触面に発生する圧力の最大値と液滴のサイズとの関係を明らかにした.前年度に構築した実験セットアップを用いて,液滴のサイズと衝突速度を変えながら実験を行った.実験では,直径が 1.3 mm, 1.8 mmと2.8 mmの液滴について衝突速度を0.2 m/sから2 m/sまでの範囲に調整して計測を行った.計測結果から,同じ液滴サイズについて圧力の最大値は衝突速度の二乗と比例することが示され,この関係は前年度の計測結果と一致したであることがわかった.しかし,衝突速度が同じ場合,液滴のサイズが大きいほど圧力の最大値が大きくなることが明らかになった.液滴と固体表面との衝突時に生じる圧力に関して理論として動圧とwater hammerの圧力のモデルが提案されたが,これらのモデルでは液滴のサイズの影響を推定できなかった.提案した手法により液滴のサイズと圧力の最大値との関係を初めて明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
令和元年度は温度と光の影響を受けないセンサを実現し,液滴のサイズと衝突の圧力の最大値との関係を明らかにできたので,当初の計画通りに進んでいる.
今後は衝突角度や液滴の表面張力・粘性等を変えて,これかのパラメータが接触面の力の分布に及ぼす影響を定量的に明らかにする.また,令和元年度に行った実験で,衝突中に液滴内に気泡が発生した際,センサ出力に周期的な信号が確認できた.今後はさらにパラメータを増やして計測を行うことで,この現象の詳細について調べる.
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
Sensors
巻: 20 ページ: 1052-10
https://doi.org/10.3390/s20041052
Proceedings of 2020 IEEE 33rd International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS)
巻: 1 ページ: 46-49
https://doi.org/10.1109/MEMS46641.2020.9056445
巻: 1 ページ: 646-648
https://doi.org/10.1109/MEMS46641.2020.9056273
巻: 1 ページ: 84-87
https://doi.org/10.1109/MEMS46641.2020.9056372
巻: 19 ページ: 4942-8
https://doi.org/10.3390/s19224942
Proceedings of 2019 20th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems & Eurosensors XXXIII (TRANSDUCERS & EUROSENSORS XXXIII)
巻: 1 ページ: 813-816
https://doi.org/10.1109/TRANSDUCERS.2019.8808780
https://unit.aist.go.jp/ssrc/index.html