研究課題/領域番号 |
17H04905
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
安藤 景太 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (30639018)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 流体工学 / 熱工学 / 混相流 / 気泡力学 / 非ニュートン |
研究実績の概要 |
本研究課題(3年計画)では,粘弾性体におけるキャビテーション気泡の静的・動的力学特性を定量評価するための,実験・プリセット型気泡力学モデル連成による粘弾性計測法の開発を行う.パルスレーザ集束照射により生成した粘弾性ゼラチンゲル中の球形ガス気泡核のサイズを,溶存ガスの物質移動を利用し準静的に制御する.生成した気泡核を起点とするキャビテーション気泡の自由振動および超音波照射下の強制振動を高速度カメラで撮影し,気泡の動的応答に対する気泡核サイズの影響を特定する.気泡の静的・動的力学応答とプリセット型モデルの比較により,ゲル粘弾性の周波数応答を超広域に算定し,キャビテーション気泡の力学に対する粘弾性効果の定量評価を実現する. 平成29年度(3年計画の1年目)の研究では,レーザ誘起プラズマの急膨張に伴う衝撃圧の評価,さらにゲル中気泡核の準静的成長の観察に基づくゲル弾性の評価を行った.第一の実験として,ゼラチンゲルへのナノ秒パルスレーザの集束照射によるプラズマ生成の可視化を行った.プラズマの急膨張に伴う衝撃波の形成を,パルスレーザ光源と超高速度カメラにより撮影し,衝撃波の伝播速度を算定した.衝撃波伝播速度の実験値をランキン・ユゴニオの衝撃関係式に代入することによりプラズマの圧力を取得した.第二の実験として,ゼラチンゲル中気泡核の準静的成長の観察に基づくゲル弾性の評価を行った.ガス過飽和状態にあるゲルへのナノ秒パルスレーザの集束照射により,球形ガス気泡核を生成した.物質拡散による気泡核の成長の可視化結果を,弾性体中気泡の準静的成長を記述する拡張エプスタイン・プレセットの式と比較することにより,静的条件下のゲル弾性を算定を実現した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表研究者は,平成25年度から平成28年度の科研費(若手研究(A))の採択課題「粘弾性体キャビテーションの時空間多重スケール解析を実現する非侵襲ハイブリッド計測」において,高粘性流体・粘弾性体中のレーザー誘起衝撃波の可視化技術を構築しており,そのノウハウを本研究課題に適用することで,おおむね計画どおり研究が進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度(3年計画の2年目)では,ゼラチンゲルにおけるパルスレーザ誘起ガス気泡の自由振動の可視化,さらに理論との比較から気泡力学に対するゲル弾性の効果を定量評価する. レーザ誘起プラズマにより生成したゼラチンゲル中の球形ガス気泡の自由振動を,パルスレーザ光源と(昨年度購入した)高速度カメラ(最高1千万コマ/秒で撮影可)により撮影する.気泡の生成および崩壊に伴う衝撃波放射の計測に基づき,気泡の崩壊時間を定義する.ゼラチン濃度およびレーザ照射エネルギーが,崩壊時間に与える影響を評価する. 線形・非線形弾性体中の球形気泡の力学を記述する拡張レイリー・プリセットの式から導出されるレイリー崩壊時間と実験を比較することにより,気泡の自由振動に対するゲル弾性の効果を定量評価する.ゼラチン濃度およびレーザ照射エネルギーをパラメータとして,線形弾性体仮定の適用範囲を特定する.
|