研究課題/領域番号 |
17H04906
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (90709156)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レーザー計測 / 定量計測 / 温度計測 / 高圧燃焼 / ロケット燃焼 / 非接触 |
研究実績の概要 |
エンジンやガスタービンなどの実燃焼器においては,高負荷燃焼を実現するために高圧燃焼が行われている.特にロケットエンジンにおいては,圧力10MPa,温度が3000Kにも至る極限環境において燃焼が行われている.燃焼場の詳細理解のためには,レーザーを用いた非接触の計測技術は有用であるが,高圧下においては吸収線のブロードニング,クエンチングレートや自発光強度の増大などの影響があり,一般に計測は困難となる.また火炎温度は,燃焼において最も重要な因子の一つであり,その定量計測は重要である.本研究では,このような高圧燃焼場に対してLaser Induced Thermal Grating Spectroscopy (LITGS) による定量温度計測を行う.LITGSは圧力が高くなるにつれて信号強度が増大するものと考えられ,極限環境の燃焼現象解明に有用であるものと考えられる.以上の背景から,本研究は,極限環境燃焼現象解明に資するために,LITGSによる高圧環境下における定量温度計測技術の確立を目的とする.平成30年度は,本研究の挑戦的な目標である,温度・濃度の同時定量計測に向けて,平成29年度に実施した高圧セル内のNO/N2混合気に対する非燃焼場のLITGS計測を継続して実施した.平成30年度は,これまでよりも広いNO濃度範囲において実験を行った.その結果,NO濃度に対して,信号強度は厳密には二次関数的な変化をすることが明らかとなった.またある程度以上のNO濃度条件においては,信号強度は一定の値となった.得られた温度は,実験条件である室温に近く,定量的に温度計測を実施する事ができた.このことから,温度・濃度の同時定量計測の可能性が見出せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において,平成30年度は(I)LITGS計測精度に及ぼす因子検討,(II)NO励起LITGSによる火炎構造解明,(III)定量温度・濃度計測への挑戦が主たる実施内容であった.これらのうち,(I)については,NO/N2を対象としたLITGSによって,特にNO濃度が高い領域においては計測された温度が実際の温度より高くなる事を見出した.また(III)については,幅広い濃度・圧力条件におけるNO-LITGSを実施する事によって,温度・濃度の同時定量計測を実現するための知見を得る事ができた.(II)については十分な成果を得る事ができなかったものの,最終年度である令和元年度に実施予定の項目である酸素富化・高温火炎に対するOH-LITGSを実施するために新たな燃焼装置の製作,高圧燃焼容器およびレーザーの整備等の準備を前倒しで行った.以上より,総合的には本研究の最終目標に向けて順調に進捗しているものと評価する事ができる.
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今後の研究の推進方策 |
新しく整備した高圧燃焼試験装置およびレーザー設備を用いてNOおよびOHを励起化学種としたLITGSを継続する.OHを励起化学種とした燃焼場のLITGS計測においては,新しく利用可能となったレーザーを用いる事で,OH(0,0)バンド励起線を用いたLITGSが実施可能になった.OH(0,0)バンドは,これまで本研究で用いてきたOH(1,0)バンド励起線より吸収スペクトルが高く,より明確なLITGS信号が得られる可能性がある.さらに,NO-LITGSにおいても,より高いエネルギーを長時間にわたって発振する事が可能となり,レーザーエネルギーに及ぼす信号強度の影響などが,より広い実験条件において実施できるようになった.このように平成30年度に整備した実験装置を用いて,当初の目標を達成するために研究を推進する.
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