研究実績の概要 |
エンジンやガスタービンなどの内燃機関においては,高負荷燃焼を行う為に高圧環境下における燃焼が採用されている.特にロケット燃焼では,圧力が10 MPa,火炎温度が3000 Kにも及ぶ極限的な燃焼環境である.このような極限環境燃焼現象を解明するためには,非接触のレーザー計測手法が有効であると考えられるが,PLIFなど従来広く用いられている手法では,自発光強度の増大など,計測を困難にする物理的な要因があるため,一般に計測は困難となる.そこで本研究では,圧力が高くなるにつれて信号強度が増大すると考えられるLaser Induced Thermal Grating Spectroscopy(LITGS)を用いて,高圧環境下における火炎温度の定量計測を実施する. これまでの検討から,励起レーザーエネルギーの吸収によって,高い温度が計測される可能性が示唆されていた.そこで令和元年度は,従来用いていたOH(1,0)バンドより高い吸収スペクトルを有する,励起波長がおよそ308 nm付近のOH(0,0)バンドを用いて吸収スペクトルが計測温度に及ぼす影響について詳細に検討した.励起波長としてOH(0,0)バンドにおけるQ1(7),Q1(6)およびR2(20)の3つのブランチを用いた.実験は,酸素富化率0.55のメタン/酸素/窒素予混合火炎を用い,最大で1.0 MPaまでの高圧環境下において燃焼実験を実施した.この実験条件においてもLITGS信号の取得に成功した.得られた信号を解析した結果,LITGSによって計測される火炎温度は,高いLIF信号強度が得られる波長で励起した場合,高く計測されることが明らかとなった.
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