研究課題/領域番号 |
17H04908
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
狩野 祐也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90510040)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音波 / 電磁波 / スペクトロスコピー / 分子間ポテンシャル / 音速 / 誘電率 |
研究実績の概要 |
今年度は、過去に開発した円筒型キャビティを用いた音波・電磁波スペクトロメータを改良し、気体の音速と誘電率を高精度に測定するためのマルチスペクトロメータ1号機の構築に取り組んだ。電磁波共振測定の高度化を図るため、周波数20GHzまでの広範囲な周波数レンジで電磁波スペクトル測定が可能なベクトルネットワークアナライザを導入し、複数の電磁波共振モードを計測可能とした。また、ネットワークアナライザの周波数基準クロックを外部のルビジウム周波数標準器と同期し、音波スペクトル測定に用いる周波数応答アナライザも同一の標準器で同期することで、音波・電磁波スペクトルを同一の周波数標準に基づいて計測できるように改良した。これにより、音波・電磁波共振周波数の測定精度を向上することができた。さらに、温度測定の高度化を図るため、特注のダブルジャケット型ステンレス恒温槽を製作し、240~420 Kの幅広い温度域にわたり±0.01 K以下の高精度な温度制御が可能となるシステムを構築した。 次世代冷媒として使用が期待されるオレフィン系フッ素炭化物について、既存の円筒型キャビティを用いた音波・電磁波スペクトロメータを用いて気相域の音速および誘電率を測定した。得られたデータに基づき、理想気体状態の定圧比熱や分極率、双極子モーメントを導出し、分子間ポテンシャルモデルと密接に関連する物理特性を評価した。上記の研究成果を、21st European Conference on Thermophysical Propertiesにて口頭発表した。また、別研究グループと共同で過去に開発した擬似球型キャビティを用いた音波・電磁波スペクトロメータによるアルゴンガスの音速ならびに熱力学温度計測に関する研究成果が、共著者としてInternational Journal of Thermophysicsに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、過去に開発した円筒型キャビティを用いた音波・電磁波スペクトロメータを改良し、気体の音速と誘電率を高精度に測定するためのマルチスペクトロメータ1号機の構築に取り組んだ。まず、周波数20GHzまでの広範囲な周波数レンジで電磁波スペクトル測定が可能なベクトルネットワークアナライザを導入し、複数の共振モードにおける電磁波スペクトルの測定を可能とした。また、ネットワークアナライザの周波数基準クロックを外部のルビジウム周波数標準器と同期し、音波スペクトル測定に用いる周波数応答アナライザも同一の標準器で同期することで、音波および電磁波スペクトルを同一の周波数標準に基づいて計測できるように改良した。これにより、音波・電磁波共振周波数の測定精度を向上することができた。 次に、温度測定の高度化を図るために、特注のダブルジャケット型ステンレス恒温槽を製作した。これは、熱媒体を入れるバスの外側に外部循環恒温槽からの温調された循環液が流れるジャケット部と、さらにその外側に断熱層を有する特注の液体恒温槽である。低温ではフッ素炭化物の不活性液体、高温では高沸点シリコンオイルを用いることで、240~420 Kの幅広い温度域にわたり±0.01 K以下の高精度な温度制御が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、改良を施した円筒型キャビティを用いた音波・電磁波スペクトロメータによりガスの音速および誘電率測定を実施するとともに、ガスの粘性測定に特化した共振器によるマルチスペクトロメータ2号機を開発する。粘性測定原理は、同一体積の2つの空洞容器(キャビティ)をキャピラリーダクトで連結した形状を持つヘルムホルツ共鳴器を利用し、低周波のヘルムホルツ音波共鳴モードにおける周波数特性のQ値から粘性を求めるというものである。ヘルムホルツ共鳴器は圧力容器内に格納して内外圧力差を最小限にするような構造とし、周波数応答アナライザより数百Hzで発生するヘルムホルツ共鳴の周波数特性を測定する。サンプル圧力は0~1 MPaの範囲で水晶発振式圧力センサを用いて直接測定し、測定器は産総研の圧力標準にトレーサブルに校正する。共振器を含む圧力容器全体を昨年度開発した特注の精密恒温槽を用いて240~420 Kの範囲で温度制御し、サンプル温度は産総研の温度標準にトレーサブルに校正された標準白金抵抗温度と精密測温ブリッジを用いて測定する。このように、国家標準に基づく信頼性の担保された測定システムを構築し、幅広い温度・圧力域にわたって粘性を精密計測可能な装置を開発する。開発した装置を用いて、理想気体に近いアルゴンなどの単原子分子について粘性の測定を行い、既報データと比較することで測定システム全体の健全性を確認する。
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