研究課題/領域番号 |
17H04908
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
狩野 祐也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90510040)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子間ポテンシャル / 音速 / 誘電率 / 粘度 / 熱伝導率 / 音波 / 電磁波 / スペクトロスコピー |
研究実績の概要 |
今年度は、有極性分子サンプル気体の音速と誘電率を広範囲の温度・圧力において測定するため、円筒型キャビティによる音波・電磁波共振を利用したマルチスペクトロメータ1号機の改良に取り組んだ。特注のダブルジャケット型ステンレス恒温槽を用い、さらに220~470 Kの幅広い温度域にわたり温度制御が可能な外部循環恒温槽を導入することで、低温から高温まで幅広い温度域において±0.01 K以下の高精度な温度制御を実現した。 有極性分子サンプルとしてオレフィン系フッ素炭化物やエーテル系フッ素化合物を用い、改良したマルチスペクトロメータ1号機を用いて気相域の音速および誘電率を幅広い温度・圧力域にわたって測定した。また得られたデータに基づき、理想気体状態の定圧比熱や分極率、双極子モーメントを導出したところ、Gaussianによる量子化学計算に基づく計算結果と良好に一致する結果が得られた。 円筒型キャビティによる音波・電磁波共振を利用したマルチスペクトロメータ1号の開発に関する研究成果について、20th Symposium on Thermophysical Propertiesの国際会議において口頭発表を行った。また、オレフィン系フッ素炭化物の音速および誘電率測定に関する研究成果について、1st IIR Conference on the Application of HFO Refrigerantsの国際会議において口頭発表し、査読付きプロシーディングスを投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、有極性分子サンプルの気相域における音速と誘電率について、広範囲の温度・圧力において測定するため、円筒型キャビティによる音波・電磁波共振を利用したマルチスペクトロメータ1号機の改良に取り組んだ。昨年度製作した特注のダブルジャケット型ステンレス恒温槽を用い、さらに220~470 Kの幅広い温度域にわたり温度制御が可能な外部循環恒温槽を導入することで、低温から高温まで幅広い温度域において±0.01 K以下の高精度な温度制御を実現した。 有極性分子サンプルとして、冷媒など作動流体としての利用が期待されているオレフィン系フッ素炭化物やエーテル系フッ素化合物を用い、円筒型キャビティによる音波・電磁波スペクトロメータを用いて気相域の音速および誘電率を幅広い温度・圧力域にわたって測定した。また得られたデータに基づき、理想気体状態の定圧比熱や分極率、双極子モーメントを導出し、Gaussianによる量子化学計算に基づく計算値と比較したところ、両者が不確かさの範囲内で良好に一致する結果が得られた。 さらに、ヘルムホルツ音波共鳴を利用した気相域の粘度計測を行うために、同一体積の2つの空洞容器(キャビティ)をキャピラリーダクトで連結した形状を持つヘルムホルツ共鳴器を製作し、スペクトロメータ2号機の開発にも取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、円筒型キャビティによるマルチスペクトロメータ1号機を用いて、様々な有極性分子サンプルについて気相域における音速および誘電率を幅広い温度・圧力範囲において測定を行う。得られたデータに基づき、分子間ポテンシャルと密接に関係している理想気体状態の定圧比熱や分極率、双極子モーメントなどを導出する。レナードジョーンズ型やストックマイヤー型など、提案されている様々な分子間ポテンシャルモデルと得られたデータを比較することで、理想的なポテンシャルモデルの挙動を評価する。 さらに、気相域の粘性測定に特化したヘルムホルツ共鳴器によるスペクトロメータ2号機の構築に取り組む。今年度開発した、2つの球型キャビティをキャピラリーダクトで連結した形状を持つヘルムホルツ共鳴器を用い、低周波のヘルムホルツ音波共鳴モードにおける周波数特性のQ値から気体粘度を求めるスペクトロメータを構築する。恒温槽など温度制御システムはマルチスペクトロメータ1号機と同じシステムを用いることで、広範囲の温度域にわたって高精度な温度測定を実現する。開発したスペクトロメータ2号機を用いて、理想気体に近いアルゴンなどの単原子分子をサンプルとして粘度測定を行い、測定システム全体の健全性を確認する。
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