研究実績の概要 |
人工心臓を装着した心不全患者の生存率とQOLを向上するため,補助人工心臓で課題のポンプ内血栓を検知する技術,及び心拍同期制御技術の開発に取り組んだ.ポンプ内血栓については,昨年度までの成果としてin Vitro環境での血栓検出を達成していた.そこで本年度は,ブタを用いた急性動物実験を行い,in Vitro環境での血栓検出に取り組んだ.in Vitro環境では血液自身が血栓を溶融させる線溶系が作用するため,ポンプ内に血栓が形成された場合でも,ごく微小である.また,血栓形成の過程も24時間程度を要する長時間に及んだ.このような状況下でも,インペラ磁気浮上用の電磁石に正弦波を印加し,インペラを数十Hz, 数十ミクロンで振動させ,その電流と変位の位相差を計測することで血栓を検出可能であることを示した. 生体心臓の心拍同期制御では,心電図や流量計等の追加の設備を用いずに患者の心拍数に応じて人工心臓の回転数を制御するシステムを開発した.具体的には磁気浮上系に構成した外乱オブザーバを用い,生体心臓の拍動波形とポンプを通過する流量の推定システムを設けた.実験では生体心臓を模擬し,拍動流を発生させるように回転数制御を行った遠心ポンプを人工心臓に接続した.構成した外乱オブザーバを用いて,模擬心臓の発生する拍動波形を推定し,流量は0.5~1L/min程度の誤差で推定した.次いで.モータの速度制御系の目標値を,拍動に同期した流量とし,推定流量をフィードバックすることで,心拍同期制御システムを構築した.前述の模擬心臓を用いた実験では,構築したシステムを用いて模擬心臓の拍動に同期して,人工心臓の回転数を制御可能であることを確認した.
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