研究課題/領域番号 |
17H04910
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田隈 建二郎 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30508833)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機構 / メカニズム設計 / 球殻 / 移動 |
研究実績の概要 |
移動中に被衝突物に衝突したときの衝撃を受け流すことができる移動体として,ジンバル構造を有する移動体が開発されている.しかしながら,従来の球殻構造を有する移動体は,探査活動を行う際に,カメラ画像にフレームが映り込んでしまうという問題があった.画像処理によりこの問題を解決することは可能であるが,外部にアクセスして作業を継続的に行うことは困難である.そのため,新たに考案した分割回転球殻構造により,外部にアクセスしての作業を実現する移動体の構築を本研究の目的としている.本研究で取り組むロボット機構は,橋梁点検時補修作業や,不慮の転倒への対応,エネルギー・空気圧の常時給電などが可能になるといった革新性が著しく高いものである.この球殻機構において,本年度は特に,ロボット実機全体において,球殻の数を,移動体を覆う1つである従来の方式から,さらに拡張させて,ローター(推進部)1つ1つを覆う球殻ロータ方式なるものを考案し,第一次試作機として,4ユニットの球殻ロータ機構構成としたものを実機として具現化した.その過程においては,球殻自体の重量がかさんだり,またその球殻自体があるがゆえに抵抗となり推進力の低下なども考えられるが,推進力よりも小さい範囲で,球殻ロータ構造を構築することに成功した.その実験においては,1ユニットの推進力を測定して,実際に実験を通じて基本性能を確認し,その後に車両型4ユニット構成とした移動体も,離陸に成功した.また,当初の最終段階としての目標の1つであった,エンドエフェクタとしてのセンダの搭載および,打音アームの搭載にまで成功しており,さらには実際に橋梁という実環境において実機動作試験を実施まで進めていることは特筆に値すると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前述したように,当初においては,本研究計画の最終段階としての目標の1つであった,エンドエフェクタとしてのセンダの搭載および,打音アームの搭載にまで成功しており,さらには実際に橋梁という実環境において実機動作試験を実施まで進めていることは極めて大きな進捗であり,今後この移動体に搭載するエンドエフェクタとの組み合わせの拡張や移動環境を水中へ拡張することも含めて,実用化への道筋を立てていることから,当初の計画以上に進展していると判断した. また,IEEE系列の世界最大規模の国際会議International Conference on Robotics and Automationにおいて,IEEE ICRA Best Paper Award on Robot Mechanisms and Designという機構関連の賞に日本人で唯一ノミネーションされていることからも,研究の進展は確実と言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,前述した移動体に,さらに多種多様なエンドエフェクタを搭載して,現場においてその機能・性能をさらに詰めて実機実験・実証する.これにより,さらなる実用化を見据えての実機開発および,その過程で派生する,基礎要素の抽出および原理検証に挑む. また,搭載するエンドエフェクタとの組み合わせの拡張や移動環境を水中へ拡張することも含めて,この移動体の移動環境を空中に限定することなく,例えば水中や,またサイズを変えての血液中などの体内環境へも視野に入れて拡張することを試みる.これは,新規性が常に求められる本研究課題において重要な位置付けのものである.
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