二種類の帯域除去フィルタを用いたデュアル光変調によって可視光と遠赤外光の強度を独立に計測できることの原理検証を行った。可視光を除去するフィルタとしてシリコンウエハを用い、赤外線を除去するフィルタとしてガラス板を用いた。それぞれを用いて機械式の光変調器を施策した。変調周波数はそれぞれ23 Hzと19 Hzとした。光センサとして、PN接合フォトダイオードの光電流の計測と、N領域の抵抗値変化の計測の両方を用いた。センサの出力をロックインアンプで復調して出力信号を得た。この結果、シリコン変調器を用いた可視光の計測では、光電流と抵抗値変化がみられ、ガラス変調器を用いた赤外光の計測では抵抗値変化が見られた。このことから、光電流と抵抗値変化を利用して可視光と赤外光を独立して計測できる可能性が示された。 さらに追加で、ロックインアンプを使ったセンサ計測の知見を、ピエゾ抵抗効果を利用したMEMSセンサの高精度化へと応用した。ピエゾ抵抗素子は数百kHzの比較的高い周波数において、純粋な抵抗成分だけでなくキャパシタンスやインダクタンスの成分を持ち、インピーダンスが複素数となる。この複素インピーダンスを考慮して、抵抗値変化を電圧変化へと変換するホイートストンブリッジについて実部だけでなく虚部もバランスをとることで、センサへの入力がないときの出力を100分の1未満にできることを示した。この成果は、本研究のように抵抗値変化を計測する用途に利用できるほか、ピエゾ抵抗効果が利用される圧力センサや触覚センサなど様々な用途に応用することができる。
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