2019年度に実施した、同一視点から同一視野角で物体の色画像と温度画像の両方を撮像できるコンパクトな同軸撮像システムの同軸性の検証方法の研究を受けて、色画像と温度画像の両方に利用できるキャリブレーション方法を検討した。一般的な色画像のキャリブレーションには黒白のパターンをもつボードが用いられる。ここから発展して、従来の色・温度画像キャリブレーションでは色と放射率の両方が異なる塗料を使うものや、黒白の一方をあらかじめ冷やすまたは温める方法があったが、周辺環境の温度変化に影響を受ける等の課題があった。そこで、温度差を生じる仕組みを持たせたキャリブレーションボードを設計した。設計したボードは2層の金属板からなり、2層の間にペルチェ素子を挟むことで上下の金属板にアクティブに温度差を生じさせることができる。これにより温度画像に対するキャリブレーションを行うことができる。また、2層のそれぞれを白と黒に塗り分けることで色画像に対するキャリブレーションを行うことができる。ペルチェ素子によって温度差が生じると同時に消費電力が熱に変換されるため、長時間の動作時にボード全体が加熱されてしまう。これを解決するために、ボードの背面に冷却機構を設けることにした。また、中赤外分光センサを用いて材料の赤外線透過特性に関する検討を行った。さらに、可視光と遠赤外光の両方に使用できる光学素子の設計のために、FDTD法を用いた光学シミュレーションソフトウェアを導入した。
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