研究課題/領域番号 |
17H04913
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐久間 臣耶 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (40724464)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械特性計測 / スフェロイド / ソーティング / MEMS / microTAS |
研究実績の概要 |
細胞凝集体(スフェロイド)を器官原器へと分化誘導する過程において,分化誘導に対する培養時の基材とスフェロイドのそれぞれの機械的な相互作用はほとんど知られていない.そこで本研究では,この影響を調査するためにハイスループットにスフェロイドの硬さ等の機械的特性を計測しマルチ(多分岐)にソーティングする,機械的特性を指標としたマルチオンチップソーティングシステムの構築を目的としている.平成29年度は大きく次の5つの項目を実施した. (1) ロボット統合型マイクロ流体チップの設計・作製技術:スフェロイドの機械特性に基づくソーティングを行うために,MEMS 技術を用いて,ガラス-シリコンーガラスの3層構造からなる高剛性なロボット統合型マイクロ流体チップの設計および作製を行った. (2) スフェロイドの機械的特性計測と指標化:機械的特性の連速計測のための自動計測システムを構築し,マイクロビーズおよび細胞を用いたフィージビリティを確認した. (3) オンチップソーティング技術:シリンジポンプとオンラインの高速度ビジョンを用いた画像フィードバックシステムを構築し,細胞の機械特性に応じてソーティングのための高速流体制御の基盤技術を確立した. (4) 培養時の基材とスフェロイドのそれぞれ硬さの機械的作用の調査:ソーティングしたスフェロイドの培養時の培養基材の硬さ制御を行うため,従来研究で報告のあるアクリルアミドゲルを用いた硬さ制御や,マイクロピラーアレイを用いた等価硬さ制御など,広く技術を調査した. (5) MechACS システムの構築技術:上記(1)~(3)の技術を統合し,Mechanical-characteristics Activated Cell Sorting (MechACS)システムの原理検証機を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において最大の課題は,スフェロイドの機械特性に応じてソーティングするシステム,Mechanical-characteristics Activated Cell Sorting (MechACS)の構築である.本年度は,スフェロイドの機械特性計測のための,ガラス-シリコンーガラスの3層構造からなる高剛性なロボット統合型マイクロ流体チップの設計および作製技術,細胞の機械特性に応じてソーティングのために,オンラインの高速度ビジョンを用いた画像フィードバックによる高速流体制御技術,および,機械的特性の連速計測のための自動計測技術に着手し,Mechanical-characteristics Activated Cell Sorting (MechACS)システムのフィージビリティを確認した.マイクロビーズおよび細胞を用いた基礎実験の結果,ソーティングのスループットは5秒/個であり,本成果を国際学会2件,国内学会2件で発表した.今後は,さらなるスループットの向上と,機械特性の指標化,および,培養時の基材とスフェロイドのそれぞれの機械的な相互作用評価が課題である.
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今後の研究の推進方策 |
現在の本研究の課題は大きく次の3つである.スループットの向上,機械特性の指標化,および,培養時の基材とスフェロイドのそれぞれの機械的な相互作用評価.これらの課題に対し,以下の項目に取り組む. (1) ロボット統合型マイクロ流体チップの設計・作製技術:ハイスループット計測・ソーティングのためのマイクロ流路設計を行う. (2) スフェロイドの機械的特性計測と指標化:フロー系での連続計測を目標とした機械特性の指標化に取り組む.さらに,ハイスループットソーティングのための機械特性計測および指標化に取り組む. (3) オンチップソーティング技術:スフェロイドの機械特性に応じてマルチにソーティングするためには,マイクロ流路中を流れるスフェロイドの位置計測に基づく流体制御が必須であると考えられるため,昨年度までに構築した高速流体制御技術を基本として,シリンジポンプとオンラインの高速度ビジョンを用いた画像フィードバックシステムを改良・評価する.さらに,マイクロ流体チップと外部ポンプシステムとのインターフェースがシステム構築において重要であるため,ミクローマクロ接続技術に取り組む. (4) 培養時の基材とスフェロイドのそれぞれ硬さの機械的作用の調査 ソーティング後のスフェロイドを,機械的特性を調整して作製した基材上で培養することで,相互作用の評価に取り組む.
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