研究課題/領域番号 |
17H04918
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
都甲 薫 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30611280)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | GaAs / 結晶成長 / 薄膜 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究では、軽くて柔らかいプラスチックの上にIII-V族化合物半導体(GaAs)を薄膜で直接合成し、高い効率と広い汎用性を両立した「ユビキタス太陽電池」の基盤技術を構築することを目指している。具体的には、GaAsがGe上に高品質形成されることに着眼するとともに、シーズ技術を活用し、プラスチック上にGaAs薄膜を創出することを目的とする。本年度においては、(1)III-V族化合物半導体の超高真空分子線エピタキシー装置の立ち上げ、および(2)II-V族化合物半導体のエピタキシャル・シード層となるモノライクGe薄膜の安定的合成技術の構築を検討した。 (1)について、GaおよびAsの蒸着源となるクヌーセンセルを新たに設置するとともに、その温度を制御することによって、GaやAsの供給レートを制御可能とした。(2)について、これまでGe薄膜の結晶粒径が試料作製のたびに異なり、ばらつきがあることが問題となっていた。今回、Al誘起層交換における重要パラメータとなる「Al大気暴露時間」に着眼するとともに、精緻に制御することにより、安定的に大粒径のモノライクGe薄膜(粒径>50 um)を得るノウハウを構築した。さらに、上記の技術をもとに、層交換法で形成したガラス上モノライクGe薄膜をテンプレートとし、基板を加熱しながらGaとAsを供給することにより、Ge薄膜の大きな結晶粒径を引き継いだGaAs薄膜をエピタキシャル成長することに成功した。詳細な結晶性および電気・光学的特性は現在評価中ではあるが、優れたIII-V族化合物半導体薄膜太陽電池の開発に直結する成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初目標は、「III-V族化合物半導体(GaAs)の超高真空分子線エピタキシー装置の立ち上げ」および「ガラス上モノライクGe薄膜をシードとしたGaAs薄膜のエピタキシャル成長」であった。一部に予期せぬ問題も生じたが、迅速な対応を図り、最終的にはそれぞれの課題について滞りなく達成した。一方、得られたGaAs薄膜の結晶性については未だ詳細評価には至っておらず、今後検討を進める必要がある。したがって、次年度以降は当初計画通り、プラスチック基板への展開に向けた合成温度の低減、および結晶品質の向上を目指して研究を遂行する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、まずは成長温度を低減し、エピタキシャル成長が可能な下限の温度を明らかにする。GaAs薄膜のエピタキシャル成長の下限温度が400℃以上であった場合、低温成長プロセスを検討する。先行研究では、GaとAsを交互に低レートで堆積させるマイグレーション促進エピタキシー法や、非晶質状態で堆積したGaAs薄膜を熱処理する固相エピタキシャル成長法により、Ge基板上に低温でGaAs薄膜が得られてきた。これらの手法を検討し、プラスチック上にGaAs薄膜を形成する。 得られたGaAs薄膜について、結晶方位および結晶粒径を電子後方散乱回折法やX線回折、結晶欠陥を電子顕微鏡やラマン分光法、キャリア寿命をフォトルミネッセンスやマイクロ波光導電減衰法、キャリア拡散長を電子線誘起電流法で評価する。結晶性(方位、欠陥)と特性(キャリア寿命)を評価してプロセスにフィードバックし、高品質化を図る。
|