研究課題/領域番号 |
17H04919
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒澤 昌志 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (40715439)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ゲルマニウムスズ / MOSFET |
研究実績の概要 |
本研究得られた研究成果を以下に示す。 (1)絶縁膜上Ge1-xSnx結晶の超高品質化 昨年度作製した絶縁膜上Ge1-xSnxワイヤには、溶融成長時にバルクシード(750 μm厚)からのSi拡散が生じるため、Ge1-xSnxの電気物性評価には不十分であった。そこで、本年度は、Siシードを50 nmに薄膜化すること、ワイヤ長さを200 μmから1 mmに増大することで解決を試みた。その結果、薄膜シード構造を採用すれば、ワイヤ中へのSi拡散量を5割程度に削減できることが判明した。また、ワイヤ長1 mmの試料では、格子置換位置Sn組成が4%以上の領域を320 μm以上の長距離にわたって形成できること、すなわち電気物性評価に適した試料の作製に成功した。加えて、オーミック電極形成プロセスを確立し、四探針測定法による電気特性評価を行なった。Si拡散領域ではSi混入による電気伝導度の低下が、Ge1-xSnx領域ではSn組成変調あるいは結晶性向上によると思われる電気伝導度の増加が観測された。 (2)基板非加熱・高濃度ドーピング技術の応用 昨年度構築した水中パルスレーザードーピング法の応用先として、高濃度n型およびp型ドーピングが必須の熱電素子を300℃以下の低温プロセスを用いて作製し、その熱電変換動作に成功した。本手法で形成したn型多結晶Ge1-xSnxは、InP基板上にエピタキシャル成長したGe1-xSnxと同等のSeebeck係数と電気伝導率を有することが判明した。熱電材料としての多結晶Ge1-xSnxの優れた性能を示した重要な成果である。一方、デバイス動作時においては、金属(Al)/n型多結晶Ge1-xSnx 界面における寄生抵抗の存在により、n型多結晶Ge1-xSnxの性能を完全に引き出すことができなかった。熱電素子においても、MOSFETと同様に寄生抵抗の抑制が重要であることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、電気物性評価に適した絶縁膜上Ge1-xSnx薄膜の形成に成功した。さらに、予備実験としてオーミック電極形成プロセスを確立し、電気特性評価を一部先駆けて実施した。上記と並行し、昨年度開発した基板非加熱・高濃度ドーピング技術(水中パルスレーザードーピング法)の応用例として熱電素子の作製なども進めた。これらの成果は、Spotlights論文への選出やポスター賞受賞にも結実している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、Ge1-xSnx領域で観測された電気伝導率の増加の理由を突き止めるべく、研究を推進する。具体的には、移動度とキャリア濃度の分離をする必要があるため、Hall効果測定を実施するとともに、その場観察により結晶成長速度との相関も明らかにする。加えて、バックゲートMOSFFETの試作を行い、トランジスタの電流ー電圧特性からオフリーク電流低減の方策を練るとともに、本研究を総括する。
|