本年度得られた研究成果を以下に示す。 ゲルマニウムスズワイヤの偏析溶融成長機構を議論するために、in-situ動画観察システムを新たに構築した。溶融成長時の温度プロファイルや窒素流量を意図的に変化させて、冷却速度を3~15℃/sの間で制御した。冷却速度が早いほど過冷却状態が長時間化すること、その間の固化速度が20μm/s程度と速く、格子置換位置Sn組成も増大する傾向にあることが判明した。これは、偏析成長時に固相から液相中に掃き出されたSn原子の拡散速度が固化速度に比べて遅く、液相中のSn組成が均一になる前に固化が進行するためだと考えると説明がつく。すなわち、固化速度が早いほど固液界面の液相側のSn組成が増大するため、固化速度が速いほど格子置換位置Sn組成が増大したと推測される。液相部分混合・完全混合ハイブリッドモデルを用い、上記の結晶成長機構を定式化することにも成功した。バックゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET)の試作も行い、ゲルマニウムスズワイヤの電子物性に関してSn組成、固化速度依存性などを得た。 本研究で得られた知見をもとに、MOSFET以外の応用(エネルギーハーベスティング、フラッシュメモリ)を見据えた材料開発・デバイス実証も実施した。具体的には、ゲルマニウムスズや組成傾斜シリコンゲルマニウムワイヤを用いたユニレグ熱電デバイス、極薄ゲルマニウム薄膜の固相成長を検討し、フォノンドラッグ熱電能、非対称なゼーベック熱電能、特異な力学特性が発現することなどを見出した。
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