研究課題
強い光の中から微小な光量変化を高感度・高速に計量する革新的なイメージセンサ技術を創出するために、50fF/μm2以上の高容量密度と低リーク電流を両立させた画素内光電荷蓄積キャパシタ形成技術と、蓄積光電荷の上澄みレベルを高感度かつ高速に検出する新規な光信号検出技術の研究に取り組んでいる。画素内光電荷蓄積キャパシタについては、トレンチ型キャパシタの形成技術と画素内集積化技術の確立に取り組み、近赤外光の高感度化のために導入した極低濃度シリコン基板に製造するCMOS撮像素子の画素内に容量密度約24fF/μm2を有する深さ約2μmのシリコントレンチキャパシタを集積するためのプロセス技術と設計基準を明らかにした。また、原子体積法によって成膜した高誘電率薄膜を用いたMetal-Insulator-Metal(MIM)キャパシタの試作に取り組み、約10fF/μm2程度の容量密度を得た。さらに、三次元積層技術の適用を見越して設計したディープトレンチキャパシタの試作を行い、90fF/μm2を超える容量密度を得た。蓄積光電荷の上澄みレベルを検出するスキミング光信号検出技術については、回路シミュレーションを用いて原理確認を行った上で、本信号読出し方式を適用したCMOS撮像素子を設計・試作した。また、本方式の特徴を活かしたアナログ・デジタル変換回路が簡便な回路構成で得られる可能性を見出した。さらに、従来の容量素子であるMetal-Oxide-Siliconキャパシタを画素内に設けて、画素毎に1pFの容量を搭載した吸光イメージングの原理確認用のCMOS撮像素子を設計・試作してその特性を測定し、約1500万電子の飽和電子数と70dBを超えるSN比を実測で得た。また本撮像素子を用いて、グルコース吸光イメージングに取り組み、5mg/dlの精度で生理食塩水中のグルコースが拡散する様子を捉えることに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していた、(1)高容量密度・低リーク電流な画素内光電荷蓄積キャパシタ構造と形成技術と、(2)スキミング光信号検出画素構成・回路技術については、それぞれ目標としていた項目を達成した。さらに、当初は計画していなかったものの、吸光イメージングの原理確認のために従来の容量素子を用いて飽和電子数を最大化したCMOS撮像素子を設計・試作してその性能を測定し、70dBを超えるSN比を得て、グルコース吸光イメージングを5mg/dlの精度で実証した。以上から高SN化による吸光イメージングの高精度化の原理確認を行い、高容量密度を搭載した際にさらに高精度化出来ることを見出した。
平成29年度にそれぞれ取り組んでいた、(1)高容量密度・低リーク電流な画素内光電荷蓄積キャパシタ構造と形成技術と、(2)スキミング光信号検出画素構成・回路技術を組み合わせるための課題を抽出し、レイアウト、プロセスフローを検討した上でイメージセンサを設計・試作し、特性を測定する。なお、平成30年度にも容量素子の形成技術の取り組みは継続し、イメージセンサにおける容量向上の効果は段階的に確認する。
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