研究課題/領域番号 |
17H04921
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 理人 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40581294)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電子デバイス・機器 / センシングデバイス / 撮像素子 / 吸光イメージング |
研究実績の概要 |
強い光の中から微小な光量変化を高感度・高速に計量する革新的なイメージセンサ技術を創出するために、50fF/μm2以上の高容量密度と低リーク電流を両立させた画素内光電荷蓄積キャパシタ形成技術と、蓄積光電荷の上澄みレベルを高感度かつ高速に検出する新規な光信号検出技術の研究に取り組んでいる。 平成30年度には、前年度に築いたシリコントレンチキャパシタの画素内集積化技術を導入した、画素サイズ16μm角、画素数128×128のプロトタイプCMOS撮像素子を設計・試作してその特性を計測した。本CMOS撮像素子では、近赤外光の高感度化のために極低酸素濃度Cz引き上げ法で製造した低不純物濃度シリコン基板を導入すると共に、画素内に容量値1.6pFの光電荷蓄積トレンチキャパシタを有している。試作したCMOS撮像素子では、前年度に試作したMetal-Oxide-Siliconキャパシタを用いて1pFの画素内容量を搭載した原理確認用のCMOS撮像素子と比べて、飽和電荷数を1.6倍に増加させると共に開口率を5倍向上することに成功した。その結果、190~1100nmの広光波長帯域における高い量子効率、2430万電子の高飽和電荷数、線形応答において71.3dBのSN比を得た。最高フレームレートは685枚/秒である。本結果によって、8回のフレーム平均回数によって本研究の目標に掲げている80dBのSN比を実質的に得ることが出来る。本CMOS撮像素子と波長1050nmのLED光源を用いた吸光イメージングにより、グルコース濃度の検量線を取得することに成功するとともに、5mg/dlの精度で生理食塩水中のグルコースが拡散する様子を30枚/秒の動画によって鮮明に捉えることに成功した。さらに、蓄積光電荷の上澄みレベルを検出するスキミング光信号検出技術に適した画素回路構成を有するイメージセンサチップを設計、試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シリコントレンチキャパシタを同一シリコン基板上の画素内に集積化する技術を築いた結果、当初の計画を前倒しして、容量値1.6pFの光電荷蓄積容量を画素内に搭載すると共に光の入射効率を示す開口率を52.8%に高めたプロトタイプCMOS撮像素子の設計・試作を行うことが出来、190~1100nmの高い量子効率と1コマの撮像における71.3dBのSN比を両立することが出来た。また、8回のフレーム平均によって目標に掲げている80dBのSN比が得られる見込みを得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまでに創出した飽和電荷数増加に資する高容量密度キャパシタを画素内に搭載したCMOSイメージセンサの性能最適化を行うと共に、画素内容量の容量密度のさらなる増加についても継続して研究に取り組む。また、蓄積光電荷の上澄みレベルを検出するスキミング光信号検出方式を実装したプロトタイプCMOS撮像素子の特性を実証する。以上から、最終目標性能である、190~1100nmの光感度波長帯域と80dB以上の信号/ノイズ比(SNR)の両立を実証する。また、本研究で試作したイメージセンサを用いた吸光イメージングの応用事例として、血糖値のモニタリング等の基礎研究に取り組む。
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