研究課題/領域番号 |
17H04925
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
多喜川 良 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (80706846)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 常温接合 / 導波路切削加工 / 強誘電体/半導体融合デバイス / ハイブリッド光導波路型デバイス / 常温移載接合 / 大気中接合・加工 |
研究実績の概要 |
100GHz以上の高速光変調を可能とするニオブ酸リチウム(以下LN)結晶で切削加工により高Q値(=強い光閉じ込め)LNリング光導波路を作製し、従来の超高速LN光変調器の小型化・低駆動電圧化を図る。これを熱膨張係数が一桁異なるSi上へ常温接合することで、将来のLSIチップ間・内の大容量・低消費電力データ伝送に資する。 LN結晶にダイヤモンド工具でナノレベルの高精度繰り返し切り込みによる延性モード切削によりマイクロリング導波路(半径300ミクロン以下)の作製に成功した。平滑な側壁かつシームレスなリング導波路作製条件についての知見が得らたことに加え、TEM観察による導波路加工時の残留歪みの調査も行った。結果として、側壁からの散乱損失が小さい強い光閉じ込め可能なリング光導波路が作製可能となることが期待される。 さらに、LN-Si集積化のためには150度以下の低温接合技術が求められる。金(薄膜・電子ビーム蒸着によるマイクロバンプ構造)を利用した表面活性化低温接合技術の開発を進めるともにLNとSi熱酸化膜との直接接合の開発も試みた。直接接合には極薄密着層を利用した接合技術に着目し、導波路集積化に向けて密着材料の適用性調査を行った。その結果、現段階ではSiが接合強度や伝搬損失の観点から有効であると考えられる。いずれも、引張り試験・ダイシング試験・ブレード試験の結果、後工程プロセスに耐えうるであろう強固な接合強度が常温(ないしは低温)で得られることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、LN結晶にダイヤモンド工具で高精度繰り返し切り込みによる延性モード切削によりマイクロスケールのリング導波路の作製に成功した。平滑な側壁かつシームレスなリング導波路作製条件についての知見が新たに得らたことに加え、導波路加工時の残留歪みの調査も行った。さらにLN-Si集積化に向け、金を利用した低温接合技術の開発に加え、LNとSi熱酸化膜との直接接合に向け極薄Si密着層の利用の検討も行った。いずれも、引張り試験・ダイシング試験・ブレード試験の結果、強固な接合強度が常温(ないしは低温)で得られることが分かった。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はリング形状・寸法精度の支配要因の明確化を行う。さらに、リング側壁の表面粗さをより詳細評価するため、SEMやレーザ顕微鏡に加え、白色干渉顕微鏡を利用する. また、リング光導波路の光学特性評価についても取りかかる予定である。次に、熱膨張係数が一桁異なるLNとSiの集積化に向けて常温接合技術の確立を目指す。Siチップ上の電子ビーム蒸着によるAu膜を微細加工し作製したAuマイクロバンプを、LNチップ上にはAu薄膜を成膜し、表面活性化後Au同士の 常温接合を前年に引き続き行う。また、接合界面に極薄密着層を介在させることでLNとSi熱酸化膜の常温直接接合を可能とする技術の確立を進め、光導波路集積化への適用性の調査も行う予定である。
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