平成30年度には、沿岸域に設置された構造物周辺の自然環境条件を再現できる風洞施設を用いて、構造物表面の劣化促進物質量に関する模型実験を昨年度に引き続いて実施した。実験では、橋桁形状に応じた表面の到達塩分量と到達する飛来塩分粒子の粒径分布について検討を行った。 その結果、橋桁模型の各部位表面で、到達塩分量と到達粒子粒径が異なることが確認された。橋桁模型の海側壁面では、到達している飛来塩分粒子の粒径が大きく、下部の梁部分では比較小さい粒径が到達している傾向があることが明らかになった。橋桁の各部位表面への飛来塩分粒子の到達過程を詳細に把握するために、模型実験の条件を再現した風と飛来塩分粒子の輸送・到達過程の数値シミュレーションを実施した。その結果、計算結果は、実験結果を概ね再現でき、橋桁形状や周辺地形が変化した場合でも汎用的に予測できることが示された。 また、風洞実験の研究成果を実橋梁に適用できるようにするために、沿岸域に設置されている実構造物を対象とした飛来塩分粒子の現地観測とそれを再現した数値解析を並行で実施した。その結果、実構造物に到達する飛来塩分粒子の到達量と粒径分布を現地観測結果から明らかにでき、観測結果が実験結果と同様の傾向であることが示された。 さらに、構造物外部の環境作用(降雨・飛来塩分量)に応じたコンクリート表面物質量の定量評価モデルの構築・改良を昨年度に引き続いて実施した。その結果、外部の時系列的な環境作用に応じてコンクリート表面の劣化促進物質量の収支を予測できる数値モデルの構築を行い、既往研究の長期的な現地観測結果を概ね再現できることがわかった。 これらの研究成果を査読付論文(コンクリート構造物の補修・補強アップグレード論文集2018、コンクリート工学年次論文集2019(掲載決定)等)として整理・発表を行った。
|