2019年度は2018年度から引き続き「(B) 実橋梁での活荷重応答と地震時応答の計測」を継続しながら,「(A) 評価性能に応じた劣化損傷モデルパラメータ事後分布推定」における画像ひずみ分布計測の導入と「(C)代替モデル構築による高効率構造信頼性計算の実証」の非線形地震応答解析への拡張を行った.具体的には以下の2項目に、主に取り組んだ. (A-1) これまでに,鋼橋の桁端部・支承の腐食に対する活荷重性能評価のための最適観測計画で,桁端部における鋼部材面内ひずみ分布パターンが不確定性定量化に用いるデータとして適切であることを解析的に示した.そこで2019年度は、境界条件を変化させられる梁供試体を用いて、桁端部での変状によるひずみ分布の変化を画像ひずみ計測で捉えられるか、実験検証を行った.さらに,通常供用時(車両通行時)の桁端部ひずみ分布の違いが、照査耐荷力に与える影響を考察し、その結果を用いて画像計測で取得する鋼橋主桁ウェブの面内ひずみ分布から耐荷力を畳み込みニューラルネットワークで推定する手法を考案し、その検証を行った. (B-1) センサ設置済の実橋梁2橋で、無線加速度センサによる地震応答モニタリングを継続した.IoTデータ取得システムのメインテナンス作業も適宜実施した.その上で,対象橋梁2橋について構築した数値モデルと地震応答データの比較による、地震時刻歴応答解析の妥当性検証を実施し、そして、照査する性能として大中規模地震発生後の車両通行性に着目し、構造の劣化損傷を考慮するフラジリティ解析の有効性を示した.また各対象橋梁地点でのハザード評価も実施し,データ同化による既存構造物の地震リスク解析への道筋を得た.
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