研究課題/領域番号 |
17H04935
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山田 卓 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70451789)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地盤調査 / 液状化判定 / 動的コーン貫入試験 / 摩擦音 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,宅地向けの地盤調査技術の1つである大型動的コーン貫入試験の調査中に地中で生じる貫入コーンとその周囲にある土との摩擦で生じる音を計測・評価し,住宅地盤の液状化判定に必要な土の粒度特性値を推定する(土質判定)技術を構築し,その技術の実用化を目指す。 研究初年度から今年度までに実施した国内9地点における地盤調査結果および大型動的コーン貫入試験による摩擦音測定実験結果を用いて,摩擦音から土の細粒分含有率を推定し,液状化判定の対象となる土層か否かを判断する方法を構築した。 摩擦音を利用した細粒分含有率の推定では,摩擦音の2乗音圧と大型動的コーン貫入試験の打撃回数Nd値をパラメータに採用した。まず,2つのパラメータの計測深度1m区間における移動平均を求め,各々のパラメータと細粒分含有率の相関から,細粒分含有率10%毎に閾値を決定した。次いで,液状化判定の対象に対応した細粒分含有率30%以下を与える閾値を決定し,それを用いて9地点の調査地点における液状化判定の対象層を推定した。 さらに,摩擦音を利用して推定した細粒分含有率を用いて液状化判定を実施し,標準貫入試験とサンプリング結果を用いた通常の液状化判定の結果と比較した。その結果,液状化安全率FLが1を下回る液状化発生の危険が高い土層において両者は良い一致を見せ,摩擦音を用いた細粒分含有率の推定および液状化判定の有効性が示唆された。 本年度に細粒分含有率の推定に用いた摩擦音に関するパラメータは2乗音圧のみであり,他にパワースペクトルや時刻歴波形の有用性を検討する必要がある。最終年度の次年度にはれらをパラメータ化し,今年度構築した手法に組み込む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,①マイクの改良と機能向上,②模型実験の継続実施,③現場実験の継続実施を当初計画していた。①については,コーンの伝達関数の評価方法の改善を継続的に行っており,伝達関数の算出仮定に統計処理を導入した結果,精度の向上が認められた。②については,研究2年目の2018年度に当初目的を概ね達成できたため,今年度は実施しなかった。③については,計画通りに現場実験データを増やす目的で2地点で実験を行ったが,2020年度に様々な土を用いて実験を実施するために必要な装置の改良を行った。当初計画では初年度に実施を計画していた独立型摩擦音計測用貫入コーンの試作については,構造の発案と作製費の見積もりを済ませているが,既に摩擦音の計測が可能なことが明らかなこと(実用可能であること),および電子基板の設計・製造費に成果が見合わないことから本研究での作製を断念する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,昨年度までに収集した現場実験および模型実験データを総合した解析を行い,摩擦音を利用した土質判定方法(液状化判定に必要な細粒分含有率の推定方法)を構築する。その過程で,地盤調査を実施した地盤を対象として,地盤調査から得られた細粒分含有率と摩擦音から推定した細粒分含有率の両方を用いて液状化判定を繰り返し実施し,構築する土質判定方法の制度を試行錯誤的に向上させる。また,構築する土質判定方法の制度向上のために,幅広い粒度の土を対象とした模型実験を追加で実施する。最後に,新しい現場で摩擦音計測実験を実施し,構築した土質判定方法の性能を確認する。
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